インバウンド(訪日客)など旅行需要が拡大する中、出雲大社(出雲市大社町杵築東)周辺で、古民家などを改修した素泊まりの宿泊施設の開業が相次いでいる。2021年ごろから増え始め、今年5、6月だけで少なくとも3施設が相次ぎオープンを予定する。新型コロナウイルス禍が落ち着き観光客の回復が見込まれ、流れがさらに加速しそうだ。課題は夜間に営業する飲食店の少なさで、関係者は営業時間の延長など対策を検討する。 

 地元の出雲商工会(出雲市大社町杵築南)によると、21年以降に把握できるだけで8軒が営業を開始。非対面が重視されたコロナ禍をきっかけに、他の利用者との交流が少なく、プライベート空間を保てる素泊まりの一棟貸しが目立つという。外国人観光客をターゲットにした施設もある。

 出雲市は昨年、延べ宿泊客数が前年比16・2%増の84万人で過去最高を更新した。コロナの収束で国内外からさらなる観光客の増加が見込まれ、出雲大社周辺では宿泊施設の開業が続く。稲佐の浜に続く通り沿いには、楽天グループの楽天ステイ(東京都)が運営に関わる宿泊施設が6月に本格オープンを予定。島根県内では松江に続き2カ所目で、古民家を改修し、各部屋に庭を用意した。

 出雲大社東側の真名井の清水の近くでは、築約120年の家を改装し、サウナを備えた一棟貸し施設が6月の稼働に向けて準備中。神門通り近くの住宅街にも、バリアフリーに特化した一棟貸しのゲストハウスが5月末にオープン予定だ。大社町内には、空き家が多いこともあり、出雲商工会の高木亨経営指導員は「民家を改修し、宿泊施設をしたいという相談が県外を中心に5件程度入っている」と需要は続きそうだ。

 素泊まりの宿が増える一方、課題は夜間に営業する飲食店の少なさ。昼間は活況を呈す神門通りも、夕方には多くの店が営業を終えている。通りの事業者などでつくる神門通りおもてなし協同組合の田辺達也代表理事は「夜のお客さんが安定的に増えてくれば、夜の営業も広がってくると思う。今は過渡期だ」と指摘。当面は宿泊客が不便を感じないよう「営業時間拡大を検討してもらったり、興味のある店舗をマッチングしたりするなど、対策を考えたい」と話した。