島根県内で、目の不自由な人が移動や情報入手の力を養うための「視覚障害リハビリテーション」の順番待ちが続いている。資格を持つ訓練士が不足しているのが理由。訓練を諦める人もおり、訓練士の確保を含めて総合的な支援体制の構築が急務になっている。

 「本当に正しく白杖(はくじょう)を使えているのか分からない」。松江市内に住む日吉和子さん(67)は不安を口にする。

 60歳の時、目の難病「網膜色素変性症」と診断され、2年前から本格的に白杖を手に取る。正しい使い方を学ぼうと、視覚障害者を対象に歩行訓練を実施している社会福祉法人「ライトハウスライブラリー」(松江市南田町)に訓練を申し込み、1年待ちとの説明を受けたが、今も指導を受けていない。自己流で白杖を使っており、「身の安全を考えると早く指導を受けたい」と口にする。

 島根県障がい福祉課によると、県内で2022年4月現在、身体障害者手帳を保有する視覚障害者は約2190人。日本眼科医会(東京都)の推計で、見えにくいなど日常生活に支障があり、不自由を感じる人は少なくとも県内に8500人程度いるという。

 県内で歩行訓練を担うのはライトハウスライブラリーと県西部視聴覚障害者情報センター(浜田市野原町)で、いずれも島根県が業務を委託している。5月現在、待機者は11人おり、待機期間は1〜2カ月が9人、1〜2年が2人。一度訓練を受けても次の受講まで期間が空くことから諦める人もいるという。点字の読み方を指導する触読訓練も2年程度の待機者が発生している。

 視覚障害生活訓練等指導者の資格取得には県外の養成機関で半年から2年間の研修が必要で、資格を持ち、実際に活動する訓練士は県内で3人のみ。日常的な困りごとの相談なども担っており、ライトハウスライブラリーの庄司健主任情報支援員は「相談を待ってもらうわけにはいかず、歩行や触読の訓練にしわ寄せが来ている」と説明する。

 島根県視覚障害者福祉協会会長の佐藤昌史さん(55)は「外に出る自信がつくし、行動範囲も広がる」と訓練の意義を強調し、訓練士の確保などを求める。県障がい福祉課の吉川雄二課長は「訓練士の確保だけでなく、相談を他の人材が担うなど総合的な支援体制を整え、希望者が必要な訓練を受けられるようにしたい」と話した。