新紙幣発行で懸念されるのが犯罪やデマだ。交流サイト(SNS)上では「旧紙幣が使えなくなる」といったデマ情報が拡散しているほか、便乗詐欺が増える恐れがあるとして関係機関が注意を呼びかけている。

 財務省や島根県警は「旧札が使えなくなるので交換・回収します」とうそを言い、現金をだまし取る詐欺が増えると警戒している。

 島根、鳥取両県警は「旧札が使えなくなる(とうたう)は詐欺」とのチラシを作成し、防犯メールなどで呼びかけている。島根県警生活安全部の大国智之調査官は「現金決済が多いお年寄りを中心に注意喚起したい」と巡回連絡でも説明する考えを示す。

 「1〜2年後に今の銀行券は使えなくなる。たんす預金をあぶり出して、誰がいくら持ってるのか(把握するのが)狙い」。2月にSNSにこんな投稿があった。

 他のユーザーから「デマだ」との指摘が相次いだが、投稿は拡散。財務省の担当者は「新紙幣の発行は偽造への抵抗力を高めるためだ。資産を把握することはできない」と説明する。

 日銀によると、発行された紙幣は法令に基づく特別な措置がない限り、使い続けることができる。福沢諭吉や野口英世らの肖像が採用された紙幣だけでなく、聖徳太子の旧1万円札なども使用できる。

 また、警察庁は財務省や日銀と連名で、3Dホログラムなどの新紙幣の特徴を記したポスターを作成。偽造が疑われる紙幣を発見した際は、警察へ届け出るよう呼びかけている。

 同庁によると、2023年に見つかった日本円の偽造紙幣は681枚。国際的に少ない水準だが、海外から持ち込まれた事例もあった。新しいお札に慣れていない当初は、比較的粗悪な偽札でも見分けが付かない恐れがあるとしている。