島根県内の高校野球界で「脱丸刈り」の動きが加速している。昨夏の全国選手権大会では慶応高校(神奈川)など丸刈りではないチームが躍進。球児の頭髪への関心が高まる中、入部を促すために自由な髪形を積極的にPRするケースもある。時代の変化とともに選手の意識やヘアスタイルも変わりつつあるようだ。

 島根県立松江東高校(松江市西川津町)では、足立悠造監督(33)が就任した2019年当時は、全部員が自発的に丸刈りにしていたが、現在の3年生が入学した前後に変化が見られ始めた。

 一つ上の学年に丸刈りが少なかったため、1年生が髪形を自由に出来るようになり、以降、丸刈りにする部員は急速に減っていった。3年の主将(17)は「髪形でプレーの質が左右されることはないと思っていた。(自由な髪形は)入部を決断するプラス要素になった」と振り返る。

 日本高野連は、選抜大会、全国選手権大会の大会運営上の留意事項に帽子は真っすぐに、深くかぶるなどの項目を設けるが、髪形の規定はなく、島根県高野連もこの留意事項に準じる。23年の全国選手権大会では、準々決勝に勝ち残った8校のうち、優勝した慶応高校を含めて3校が丸刈りではなかった。

 島根県内でも、松江東高のように髪形についての自由度を高める学校が増えており、山陰中央新報社の取材によると、松江市内では硬式野球部がある10校のうち、部員全員が丸刈りなのは4校と半分以下だった。

 日本高野連の調査によると24年度(5月末現在)の加盟校の硬式野球部員は12万7031人で、14年度(同)に比べて25・4%減。少子化の影響で部員確保に苦労する高校が多い中、島根県立松江農林高校(松江市乃木福富町)は、昨年から新入生に「丸刈りのルールはない」と積極的に説明するようになった。こうした取り組みもあって、近年は1桁の年が多かった新入部員数が今年は11人に上った。

 一方、部員の髪形を丸刈りで統一している部もメリットを感じている。昨夏の島根大会を制し、寮生が多い私立立正大淞南高校(同市大庭町)は、選手がお互いにバリカンを使って髪を短くしており、理容室などに通う時間や経済的負担の軽減につながっている。私立開星高校(同市西津田9丁目)の野々村直通監督(72)は「3年の夏の大会が終わるまでは、野球と勉強に打ち込んでほしい」と精神的な面での効果を強調する。