「2024年問題」は人手不足が深刻な建設業界にも追い打ちをかけている。長引く資材価格の高騰も相まって、工事の着工を延期する例も珍しくない。4月に時間外労働の上限が年720時間に制限され、建設各社は好調な建設需要への対応や将来の担い手確保に向けた働き方改革を急ぐ。

イオンは今年度、予定していた大規模商業施設「イオンモール」の開業を延期し、新規出店が26年ぶりにゼロとなる。東京・五反田の「TOCビル」は建て替え工事に着工する予定だったが、大幅な延期を発表した。いずれも建設業界の人手不足や資材価格高騰などを理由とした。

建設業界は「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが強く、若者から敬遠されがちだ。リクルートワークス研究所は建設職種で令和12年に22万3千人、22年には65万7千人の労働力が不足すると推定する。残業規制強化で人手不足に拍車がかかれば、さらなる工事の遅れが懸念される。

業界が注力するのが適正工期の確保だ。各社は労働時間削減などを図るため、週休2日に相当する「4週8閉所」を前提とした工程を徹底してきた。6月には改正建設業法が成立。改正前は必要な工期よりも短い工期での契約を発注者側のみに禁じていたが、受注者側にも適用する。清水建設の坊田淳建築企画室企画部長は「なるべく工期を確保したいという話に理解を示してくれる顧客も増えている」と変化を実感する。

「省人化・省力化」も大きなカギを握る。大和ハウス工業の担当者は働き方改革が進みにくい背景について、紙資料やFAXでの連絡など「アナログな部分が非常に多い」と話す。同社では、現場に設置したカメラによる遠隔での確認や、施工業者とのデータ共有などを推進。デジタル化・自動化による労働時間削減の余地はまだ大きい。

一方、国土交通省は4月、建設現場の生産性向上に関する指針を刷新した。建設機械の遠隔操作や人工知能(AI)活用による施工の自動化などを進め、22年度までに5年度比3割超の省人化を目指すなど、人手不足への対応に本腰を入れている。(重川航太朗)