トラック運転手の残業規制が4月に強化されてから3カ月が経過した。経済活動や生活面で物流停滞の影響は表立って出ていないが、物流の現場では運転手不足でトラックの手配に苦慮したり、事業者の倒産が増加したりする事態が起きている。事業者の連携やM&A(合併・買収)も活発化するなど、業界再編の兆しも出ている。

コストアップと荷物減少のダブルパンチ

「4月以降、荷主から『運べない。車がいないので探してほしい』という問い合わせが増えている」。ある中堅物流事業者の東北の営業所長はトラック運転手が不足する「2024年問題」の影響を肌身で感じている。

運転手の時間外労働の上限は年960時間に制限され、1日の拘束時間の制限も強化。これまで1人の運転手が1日で配送できた距離でも2人もしくは2日での運送が必要になった。運転手が確保できない中小事業者には長距離の輸送から撤退する動きがあり、荷主がトラック手配に苦慮するケースが出ている。

「4月以降は営業所の荷物の量が2〜3割減っている」と前出の所長は明かす。背景には荷主がトラックの運転手不足に備え、鉄道やフェリーを活用する「モーダルシフト」を急拡大していることがある。2024年問題への有効な対抗手段の一つだが、トラックで運ぶ事業者にとっては受注の減少となる。

人件費上昇などコスト増と荷物の減少がダブルパンチとなり、経営環境は厳しさを増す。東京商工リサーチの調べでは、5月の「道路貨物運送業」の倒産件数は前年同月比2・2倍の46件で4月に続いて前年の2倍超となった。小規模の下請け業者が多く、荷主との運賃の価格交渉力が乏しいことも影響する。

効率求め協業が本格化

運転手の高齢化もあり今後は人手不足が一段と深刻になる見通しだ。輸送能力は令和6年度に14%、12年度は34%不足するとの試算もある。トラック1台当たりの積載率を高め、少ない人手で効率的に輸送する仕組みづくりが急務となっている。

物流業界では今年に入り、協業が本格化している。日本郵便と西濃運輸は5月、長距離の共同配送を来年から始めると発表。6月には物流大手グループのSGホールディングスやセイノーホールディングスが相次いで同業の買収を発表するなど合従連衡も進んできた。

一方、公正取引委員会は6月、住宅設備機器販売業の「橋本総業」に対し、商品の配送を委託した運送業者に時間外労働の代金を払わなかったとして独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査に入った。物流業界では荷物を依頼する荷主の力が圧倒的に強い構造だ。2024年問題を受けて政府は荷主への監視を強め、「荷主を含めた業界全体の変革を促している」と運輸総合研究所の土屋知省特任研究員は指摘する。(万福博之)