自社製品の中古品を回収して使用可能か確認し、修理や清掃をした「公式リユース(再利用)品」を販売するメーカーが増えている。消費者にとっては安価な上、製造元が再利用のお墨付きを与えた商品だけに安心して購入でき、メーカーにとっても無駄を減らして環境への配慮をアピールできるというメリットがある。リユース市場は年々拡大しており、今後も参入が増えそうだ。

最大で新品の9割引き

アパレル大手の三陽商会は21日、東京都新宿区のアウトレット店でリユース品の販売を始めた。ワンピースなど約500点のリユース品が、百貨店のブランド衣料の売り場のように並ぶ。顧客から回収し、検品後にクリーニングなどを施した「認定リユース品」の価格は新品の最大9割引で、ブラウスなどは2千〜4千円と破格だ。さらに、今年度内に同様のリユース品の売り場を都内のアウトレット店2店舗にも開設する予定。

オンワードホールディングスも、平成26年から衣類などのリユース品を東京都武蔵野市の店舗で販売しており、29年からは公式通販サイトでも販売を始めた。今年2月末時点で782万点を引き取り、うち53万点を販売している。

数分で売り切れる

同様の動きはさまざまな業界に及んでいる。

パナソニックは今年4月から、不良品や店頭に展示された見本品のテレビ、冷蔵庫など10カテゴリーの高級家電製品を修理、清掃した「検査済み再生品」の販売を公式ショッピングサイトで正式に開始。ドラム式洗濯乾燥機は新品価格より2割以上安く、「サイトに掲載して数分で売り切れるほどの人気」(広報担当者)という。

土屋鞄製造所(東京都足立区)は令和3年から、販売した使用済みバッグなどを回収。これまで約1600点を引き取り、700点以上を再び販売した。職人が修理し、クリーニングしたリユース品は新品に比べ2〜5割程度安く、「売り上げは毎年20%ずつ増えている」(担当者)という。

メーカーがリユース品の販売に乗り出すのは、使用可能な商品を有効活用することで廃棄を減らし、環境負荷を低減するのが狙い。三陽商会の松尾峰秀専務執行役員は目的を「資源循環型社会実現への貢献」と説明し、「社会貢献を継続するには収益化が必要だ」と強調。今年度内の黒字化を目指すとしている。

13年連続で拡大

業界専門紙「リユース経済新聞」の調査によると、令和4年のリユース市場規模は前年比7・4%増の2兆8976億円。集計を開始した平成21年以降、13年連続で拡大を続けている。日常的にフリーマーケットアプリで売り買いをする若者のほか、「新品神話」を抱く中高年の中古品に対する抵抗感も薄れている。近年の物価高も市場の拡大を後押ししている。

同紙の瀬川淳司編集長は「SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みの中で、売っておしまいではなく回収してどのように有効活用するかを考え、行動する企業が増えてきている」と指摘。その上で「消費者にとっても公式リユース品は安心感があり、これまで中古品を購入したことのない層にも受け入れられていくのではないか」と話している。(小島優)