円安進行の勢いが盛り返している。26日には一時、1ドル=160円台前半と約37年半ぶりの円安水準を更新した。市場では、政府・日銀が4〜5月に続き、再び為替介入に踏み切るかに関心が集まっている。介入を繰り返せば円安抑止の効果が薄れかねないため、当局は投機筋との厳しい攻防を強いられそうだ。

「日本はこれまでの為替介入の手法について、米国側からお墨付きを得ている」

ソニーフィナンシャルグループの尾河真樹チーフアナリストはこう指摘し、再介入のハードルはそれほど高くないとの見方を示した。根拠としているのが、米財務省が20日に公表した外国為替報告書だ。ここで米国は日本を通貨政策の「監視対象」に再指定した。

対米貿易黒字額と経常黒字が基準を超えたことがその理由だ。為替介入に関しては、実績が毎月公表されていることから「透明性がある」と、むしろ評価されている。

とはいえ、再介入のタイミングをはかるのは難しい。4月29日の水準を超えたからといって、ここで実施すれば「160円近辺が防衛ライン」と見透かされてしまうからだ。

日銀は金利を低く抑える一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げが遅れ、日米の金融政策は対照的だ。低金利の円を市場で借りて、高金利通貨のドルで運用することで収益を得る「円キャリー取引」が活発になりやすく、これが円安圧力となっている。

尾河氏は「急激な円安進行のサインが出てくれば、介入に踏み切るのではないか」との見方を示している。(米沢文)