政府が物価高対策として掲げた定額減税が6月から始まるのに加え、大幅な賃上げが波及すれば、物価高で苦しむ生活者の家計にプラスに働く。ただ、電気・ガス料金の負担軽減策は5月分を最後に終了し、足元の円安も先行きの物価を押し上げる要因となる。政府は減税を今回限りと説明しており、効果は限定的との見方がある。

内閣府の試算では、令和6年度の所得増加率は前年度比3・8%。このうち1・3%程度を定額減税などの効果と見込む。新藤義孝経済再生担当相は「可処分所得が上がっていくことを実感してほしい」と話す。

経団連がまとめた6年春闘の1次集計結果によると、定期昇給や基本給を一律に引き上げるベースアップ(ベア)を含む大手企業の賃上げ率は平均5・58%で、33年ぶりの高水準だった。日本製鉄など労働組合の要求を上回る回答をしたケースもあった。

一方、生活者にとって痛手となるのが電気・ガス料金の値上げだ。減税と賃上げが実現しても、節約志向が高まり、消費が抑制される恐れがある。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは減税と低所得者向けの給付による実質国内総生産(GDP)の押し上げ効果は0・19%にとどまると試算。「国民負担となる5兆円という巨額の資金を使いながら、景気浮揚効果は限定的で、費用対効果の低い政策」と指摘する。

「個人も春闘での賃上げの恩恵をすぐには実感できないのではないか」とし、実質賃金が安定的にプラス基調となるのは今年の年末と予想する。(宇野貴文)