「言えない秘密」(河合勇人監督)は、同名の台湾映画が原案の切ないファンタジー・ラブロマンス。ある秘密を抱えたヒロインを演じるのは、映画やドラマに引っ張りだこの古川琴音(27)だ。ロマンスものでのヒロインは初めて。「うれしいよりも先にびっくりしました」と瞳を輝かせる。

英国留学から帰国し、音大3年生に復学した主人公の樋口湊人(京本大我)が、旧講義棟の演奏室で聞いたことのない曲をピアノで奏でる内藤雪乃(古川)と出会う。曲名を尋ねる湊人に雪乃は、「秘密」とささやく。

原案の台湾映画は、「時をかける少女」(昭和58年、大林宣彦監督)へのオマージュのようなファンタジー映画だが、河合監督はより現代的な色合いに全体を整えた。

雪乃は何者なのか。謎を秘めながら、湊人に思いを寄せる姿は、とても愛らしく、いじらしい。そう伝えると古川は、「わあ、ありがとうございます。よかった。安心しました」と笑顔を見せ、「自分が、ラブストーリーのヒロインをできるとは、思ってもいなかった」と意外なことを明かす。

「私自身、ラブストーリーをあまり見ていなかったし、自分が恋愛をしているイメージもわかなかったんですよね。このお話をいただいたときは、うれしいっていうよりも先にびっくりしたし、プレッシャーもありましたが、すごくすてきな物語なので、ありがたくお引き受けしました」

そして、「雪乃の湊人に対するいちずな思いを、素直に伝えることだけを心がけて演じました」と話す。

売れっ子だ。昨年のNHK大河ドラマ「どうする家康」での、身のこなしが軽い間者役を覚えている人も多いだろう。今年は、今月最終回だった「ACMA GAME アクマゲーム」(日本テレビ系)、7月からの「海のはじまり」(フジテレビ系)と立て続けに民放ドラマに出演。映画はこれがもう3作目で、あと4作も公開が控えている。

幼い頃からバレエや演劇に打ち込み、立教大3年生のときオーディションを受けて現在の事務所に入った。

「私は、おそらく直感型の人間だと思うんですよ。就職していたとしても自分にとって正しい道を選んでいたと思うのですが、あのときは、お芝居をしている自分のほうがピンときた」

背筋を伸ばし、愛らしい声で、はきはきと答える。

「人間として、どうありたいかを、最近はよく考えます。役はフィクションですが、それを見て共感してくださるお客さまがいる以上、演じる役の人生をきちんと背負えるような人間になりたいです」(石井健)

28日から全国公開。1時間54分。

古川琴音

ふるかわ・ことね 平成8年、神奈川県出身。30年、デビュー。NHK連続テレビ小説「エール」で注目される。映画は今年、決まっているだけで「お母さんが一緒」(7月)、「シサム」(9月)、「Cloud クラウド」(同)、「劇場版 ACMA GAME 最後の鍵」(10月)の公開が控えている。