中学受験塾費用の適正価格 「お金はかけた。あとは本人次第」で本当にいいのか  桜井信一の攻める中学受験

産経ニュース6/7(土)11:00

中学受験塾費用の適正価格 「お金はかけた。あとは本人次第」で本当にいいのか  桜井信一の攻める中学受験

中学入試に臨む受験生ら

中学受験までにかけるコスト、いくらなんでもかけ過ぎだと思うのです。年間に塾に支払う総額を12で割ると月額5万円なんて安い方で10万円かかるコースもあります。

年間の授業料、季節講習、何とか特訓、テキスト代、なぜか合宿まである。そこまで費用がかかる用事をよくも思いつくなあと思うほどイベントだらけです。ところが、塾の方も厳しい事情があります。賃料や人件費の高騰だけでなく、印刷代も広告宣伝費もつい2年ほど前と比較すると2割から3割上げしている。こっちだってコスト増なんだと思っていることでしょう。

大手の集団塾は主要な駅前に必ず教室があります。いわゆる塾銀座と呼ばれる駅前には数え切れないほどの塾が並んでいます。賃貸ショップか、塾かくらいの数です。その各校舎の中に先生が何人かいて、事務方の人もいる。駅周辺には大きな看板を出す。生徒さんが通いやすいように、なるべく多くの教室を出店し、いま勢いがあると見せるために広告を出す。その費用が塾に通わせる家庭の出費を大きくするのです。

どうやらお互いにコストが増える構造を作り出しているように思えます。では、個別指導や家庭教師はどうでしょう。こちらもやっぱりかなりのコストがかかります。家庭教師は高いなあと思ったことがあるかもしれませんが、よく考えてみると家庭教師の事情も見えてくる。1時間1万円もするお高い先生がいたとします。高学歴だからそりゃ1万円は仕方ないかと思ってしまいますが、高い理由はもっと単純です。いくら人気の先生でも1日に2件通うのが精一杯でしょう。生徒さんは放課後しかいないのだから稼働時間が限られています。

夕方の5時か6時に1件目の訪問をしたとして、移動時間を考えると次の家が最後の訪問になる。そんなにうまく近くの家が2件目というわけにいかないのです。1日2件で25日働いても50コマです。すべての予定を埋め尽くすことってなかなか厳しいでしょう。風邪で振替してほしいという子もいます。塾の予定とうまく合わない子もいるでしょう。

土日もフル稼働して40コマ訪問できたとして、「あれ?」という収入になります。もちろん家庭教師の先生も広告宣伝費をかけないと集客できませんから、指導料がそのまま収入になるわけではないのです。

つまり、普通にやると儲からないのが塾業界。でもなくては困るのでみんなでその屋台を支えているのです。さて、本当にその大きなコスト、必要でしょうか。かなり特殊なノウハウが必要な難関校、ライバルとギリギリの競争をしながら刺激を受けなければいけない難関校、この場合はある程度のコストは仕方ないかもしれません。

しかし、殆どの学校は特別な対策は必要ありません。基礎的なことと、標準的なこと、これをしっかり勉強して臨めば、ちゃんと合格するはずなのです。年に50万円も100万円もいるはずがない。

でも多くの人がこのコストを積極的に出すのです。「出したい!」と言うのです。そこには別の事情が隠れています。

通塾以外の方法、例えば「進学くらぶ」や「Z会」などの通信という方法があります。算数と国語を下剋上受験塾の動画で勉強してくれている子もいます。これは家で親の目の届く範囲で勉強することになりますから、子供がダラダラしている様子を目の当たりにしてしまう。1日や2日なら耐えることもできるでしょう。でも、これが受験まで続くと耐えられそうにない。だから勉強している様子を見なくてもいいので塾へ行かせるのです。

そんなことしても定期的に届く成績表から逃げることはできませんが、「お金はかけた。あとは本人が頑張るかどうかにかかっている」という丸投げ状態に逃げるのです。ボリュームゾーンの子は塾に行っても家と同じようにダラダラしているはず。

その理由は簡単です。もし少し頑張ってしまうと、塾のテストの平均点を超えてしまうのです。私は自分で勉強してみて感じました。塾の平均点はちょっとやれば超えてしまいます。多くの子が平均点になるように、「そのくらいわかるよ」という問題が多く含まれています。

そこにこの大きなコストをかけていることに気づいてください。いや、気づいているかもしれませんね。その費用対効果、受験の結果だけでなく、毎日を平穏に過ごすメリットも含まれているとしたら、塾の役目は「受験勉強」ではなく、やや「学童寄り」になりませんか。

目をそらさず、「受験」というイベントを経験してこそ、子も親も数あるライフイベントの1つを有意義なものに出来るのではないでしょうか。

筆者紹介

桜井信一(さくらい・しんいち) 昭和43年生まれ。中卒の両親のもとで育ち、自らも中卒になる。進学塾では娘の下剋上は難しいと判断、一念発起して小5の勉強からやり直し、娘のために「親塾」を決意。最難関中学を二人三脚で目指した結果、自身も劇的に算数や国語ができるようになる。現在は中学受験ブログ「父娘の記念受験」を主宰、有料オンライン講義「下剋上受験塾」を配信中。著書に、テレビドラマ化されたベストセラー『下剋上受験』をはじめ、『桜井さん、うちの子受かりますか』、馬淵教室と共著の『下剋上算数』『下剋上算数難関編』などがある。

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6/16(月) 17:03更新

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