出産費用への公的医療保険の適用を巡る議論が、26日の厚生労働省の有識者検討会で本格的にスタートした。出産費用を巡っては、すでに政府から出産育児一時金50万円が支給され、各自治体も助成金などを用意している。保険適用などによって「出産費用ゼロ」を目指す動きに対し「出生率が向上するとは思えない」といった冷めた声も聞こえる。

大阪市内在住で現在妊娠6カ月という30代女性は、地元・広島での里帰り出産を計画。費用は約53万円を見込んでいるが、別に「10万円ほどかかる」という無痛分娩も検討している。

ただ、大阪市からは妊娠届を提出した際に出産応援給付金5万円が支給され、妊婦健診は無料。出産後には政府の一時金50万円のほか、市から子育て応援給付金5万円が支給される予定だ。

「正直、今もいろいろ支給されている。出産費用ゼロに無痛分娩が含まれるかは分からないし、すごく助かるわけではない」と女性は打ち明ける。さらに「自己負担なしだから『2人目を産もう』とはならない。出産費用よりも子育て費用の方が問題」とし、出産費用ゼロは少子化対策にはつながらないとする。

産婦人科医院の多くは、出産費用ゼロの前提となる保険適用に対し、価格を自由に設定できなくなるなどと抵抗する。日本産科婦人科学会は「保険適用によって、経営基盤の弱い施設を中心に分娩施設の減少に拍車がかかる可能性がある」との見解を示している。