地域政党「大阪維新の会」のお膝元でごたごたが目立つ。大阪府枚方市では28日、教育長人事を巡り混乱を招いたとして、維新の市長が市議会で問責決議を受ける事態に陥ったが、与党の維新市議団は反対しなかった。先だって市長が提出した人事案に反対する構えも見せるなど隔たりは大きい。

「退席とは議場で初めて知った。反対してほしかった」

28日の枚方市議会。閉会後、伏見隆市長は感情を抑えながら本音を漏らした。自民、公明両党や旧民主系など4会派が提出した決議案の採決を前に維新市議団10人が退席し、かばってくれなかったからだ。

市関係者によると、同日朝、決議案に対する態度を決める維新支部の会議が開かれ、地元選出の国会議員らも集まった。

「(伏見氏を)守ったらなあかん」「決議にはまっとうなことが書いてある」。意見は割れたが、最終的に退席という折衷案に落ち着いた。国会議員らも容認し、市議の一人は「決議に反対する理由がなかった」と述べた。

同じような会合は6月中旬にもあり、出席した伏見氏は市議団に強い口調で迫った。「他会派に配慮したところで何があるというのか」

議題の中心は副教育長を教育長に充てる人事案だ。伏見氏が同14日、議会に提出したが、維新市議団は会合で反対を決めた。通常考えづらい事態はなぜ起きたのか。

教育長人事案が発端

話は3月議会にさかのぼる。伏見氏はこの人事案を主要野党会派へ事前に打診したのだが、一蹴されてしまう。理由はさまざまだが「国政でも対立する維新との関係性がないとはいえない」(別の市関係者)。

結局、3月議会での上程を断念。正副議長と主要5会派は6月4日、早期決着を求める意見書を伏見氏に宛てる。維新市議団代表も名を連ねた。そこで、伏見氏は3月議会で見送った人事案を6月議会に提出する。

議会側の反発は強かった。維新市議団もこの人事案には乗れなかった。伏見氏が取り下げなければ否決は明らかな上、他会派との関係悪化で、他の議案にも影響が出かねないためだ。

市議団には別の事情が見え隠れする。最大会派だが、過半数に満たず、議長ポストも2年連続で取れていない。ある維新関係者は「これ以上、他会派との間で摩擦を生じさせたくないというのも本音」とみる。

伏見氏が今月24日の議会で人事案の取り下げを表明し、騒動は収束したかにみえたものの、自身2度目の問責決議を受けた伏見氏の政治的ダメージは大きい。問責決議に反対しなかった市議団とのしこりも残る。

ある市議はこう言ってはばからない。「自身の思いで突き進んでも何も得られない。いいかげん理解すべきだ」

自公とのさや当て激化

先の通常国会での政治資金規正法改正への賛否が衆参で異なるちぐはぐさに、国政政党「日本維新の会」に対する厳しい意見が飛び交う中、拠点の大阪では、次期衆院選を見据えた他党とのさや当てが激化しつつある。旗振りしてきた2025年大阪・関西万博への逆風にも苦しむ。

大阪府東大阪市では、野田義和市長が今年3月に専決処分した給料の2割削減や退職金ゼロに対し市議会は今月、「議会軽視」として大阪維新の会を除く反対多数で「不承認」とした。

野田氏は昨年の市長選でこれまで支援を受けた自民、公明から維新に〝転身〟し5選。裏切られた自公との対立が鮮明だ。

次期衆院選で維新が初めて公明と戦う衆院大阪6区の同府守口市。今月、市議会に社会教育関係団体への補助金に関する事務調査特別委員会が設置された。

議会側に説明なく交付対象が広がった経緯を調べるとしており、公明など維新以外の会派が設置に賛成。瀬野憲一市長は維新首長団の一人だ。

会場整備費の増額などから風当たりが強まる万博でも火の手があがる。元維新府議で、その後維新とたもとを分かった同府交野市の山本景市長は、府の子供招待事業を巡る学校意向調査に関し、調査の選択肢に「希望しない」がないと明かし、参加を強制する「踏み絵だ」と非難している。(矢田幸己)