立憲民主党の泉健太代表の任期満了まで30日で3カ月となる。泉氏は再選への意欲をにじませており、党内グループ「新政権研究会」(約20人)を中心に続投待望論は根強い。一方で、岸田文雄首相が9月の自民党総裁選前の衆院解散を見送れば、立民の新代表は野党第一党を率いる「首相候補」として次期衆院選に臨む公算が大きくなる。立民内には、閣僚経験のない泉氏の手腕を疑問視する向きがあり、野田佳彦元首相、枝野幸男前代表ら重鎮に期待する声もくすぶる。

泉氏は28日、代表選にどう臨むかを記者会見で問われると「まだ考える時期にはない」とはぐらかした。

ただし、発言を額面通りに受け取る向きは少ない。泉氏を支えてきた新政権研究会は、既に再選出馬を前提に動きつつある。同会所属の中堅は、4月の衆院3補欠選挙で全勝した成果などを挙げて「泉氏は結果を出している」と強調する。

次期衆院選では、派閥政治資金パーティー収入不記載事件の影響で自民への逆風が予想される。立民が僅差で自民に詰め寄れば、他党と連立を組み政権を奪取する余地も皆無ではない。民主党政権時代、泉氏は政務官には就いたものの閣僚は務めておらず、政権交代を視野に入れた場合は経験不足への懸念が際立つ。

そこで浮上しているのが野田氏や枝野氏への待望論だ。野田氏のグループ「花斉会」(約10人)に所属する中堅は「内に秘めた熱い思いはある」と胸中を読み解く。また、野田氏は日本維新の会の馬場伸幸代表と良好な関係にあり、立民の閣僚経験者は「野田氏が代表に就けば維新との連携がうまくいく」と期待する。

枝野氏は周辺に「先のことはまだ分からない」と語り、代表選出馬に含みを持たせる。旧立憲民主党時代から党を率いてきた「創業者」として、再び先頭に立つことへの意欲は衰えていないようだ。枝野氏に近い若手は「本人はどんと構えている」と解説し、待望論が高まれば出馬を決断する可能性はあると読む。立候補した場合は、党内最大グループ「サンクチュアリ」(約30人)の支援を受ける公算が大きい。

とはいえ、野田氏や枝野氏では「刷新感」に欠けるという指摘もある。中堅・若手グループ「直諫の会」(約20人)内には、会長である重徳和彦衆院議員を推す声があり、重徳氏は代表選をにらんで政策の取りまとめを進める構えだ。

代表選では、「一清会」(約15人)を率いる小沢一郎衆院議員の動向が波乱要素になる可能性もある。泉執行部への批判を重ねてきた小沢氏は18日、「誰かを立てなければいけない」と記者団に語り、対抗馬擁立に動く意向を示唆した。(深津響)

立憲民主党代表選

立候補には国会議員20人以上の推薦が必要。国会議員や党員、党籍がある地方議員らに投票権がある。ポイント制で争われ、合計ポイントの過半数を獲得すれば当選となる。最初の投票で過半数獲得者がいなければ決選投票を行う。令和3年11月の前回代表選には泉健太氏、逢坂誠二氏、小川淳也氏、西村智奈美氏の4人が立候補。泉氏は1回目の投票でトップになったものの過半数に達せず、決選投票で逢坂氏を破った。泉氏の任期は今年9月末まで。