アルメニア首相が「敵対国」トルコを異例の訪問へ 「ロシア離れ」政策の一環か

産経ニュース6/20(金)8:23

南カフカス地方の旧ソ連構成国、アルメニアのパシニャン首相は20日、トルコを訪問し、同国のエルドアン大統領と会談する。両国は19世紀末から20世紀初頭にかけてオスマン・トルコ帝国で起きたとされる「アルメニア人虐殺」などを背景とした歴史的対立から国交を結んでおらず、パシニャン氏のトルコ訪問は異例だ。今回の動きは、アルメニアが近年進める「ロシア離れ」政策の一環だとみられる。

アルメニアメディアによると、同国議会のシモニャン議長は17日、パシニャン氏のトルコ訪問を「歴史的だ」と評価。アルメニアの指導者がトルコの招待で同国を訪問し、首脳会談を行うのは初めてだとした。会談では両国関係が幅広く協議される予定だという。

アルメニアは4世紀にキリスト教を国教とした「世界最古のキリスト教国」だが、イスラム勢力に支配される時代が長かった。オスマン帝国の一部だった19世紀末と20世紀初頭には、トルコとロシアの対立などを背景に2度にわたりアルメニア人の虐殺が発生。アルメニアはトルコが150万人のアルメニア人を殺害する「ジェノサイド(集団殺害)」を行ったと主張してきた。トルコはジェノサイドを否定し、両国間には遺恨が続いてきた。

1980年代後半以降も、アルメニアは係争地ナゴルノカラバフの支配権を巡って隣国アゼルバイジャンと後ろ盾であるトルコと対立。両国はイスラム教国で、言語・民族的つながりも深い。アルメニアはロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)に加盟し、アゼルバイジャンとトルコを牽制してきたが、2020年、カラバフを巡る紛争でトルコに支援されたアゼルバイジャンに事実上敗北したほか、23年にはアゼルバイジャンの再進攻を受け、カラバフを喪失した。

30年間以上に及んだカラバフ紛争の終結に伴い、パシニャン氏はアゼルバイジャンやトルコとの関係修復を模索。23年にはエルドアン氏の3期目の大統領就任式に出席するためトルコを訪問し、同国のチャブシオール外相(当時)と会談した。今年始めには「ジェノサイド」の真相を再検証すべきだとの考えも示した。

パシニャン氏は一方で、ロシアとCSTOに対しては「紛争でアルメニアを支援する義務を果たさなかった」と批判し、距離を置く姿勢を強めてきた。パシニャン氏は24年、アルメニアがCSTOへの参加を凍結したと表明。欧米諸国との軍事協力にかじを切った。

パシニャン氏は今回のトルコ訪問で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国トルコとの関係を深め、アルメニアと欧米の連携を強化したい思惑だとみられる。また、紛争後に進めてきたアゼルバイジャンとの平和条約の締結交渉を進展させる狙いもありそうだ。

一方、「オスマン帝国の再興」を目指しているとされるエルドアン氏は、アルメニアをトルコ側に取り込み、「失地回復」につなげようとしているとの観測が出ている。(小野田雄一)

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