資生堂レディス最終日(30日、神奈川・戸塚CC=6697ヤード、パー72)1打差の2位で出たプロ4年目の桑木志帆(21)=大和ハウス工業=が4バーディー、1ボギーの69で回り、通算11アンダーでツアー初優勝を果たした。前年はプレーオフの末に涙の2位。リベンジを誓った舞台でうれし涙に変えた。単独首位で出た堀琴音(28)=ダイセル=が72で通算9アンダーの2位。原英莉花(25)=NIPPON EXPRESSホールディングス=が69で回り通算8アンダーの3位だった。

ウイニングパットを沈めた桑木は雨空に向かって両手を突き上げた。昨年2位だったグリーン上で歓喜の瞬間。みるみるうちに涙がこみあげた。

「初優勝をした実感があまりなくて、何を言おうか頭が真っ白。去年の忘れ物を取りに来られて本当によかったです」

1打差で首位の堀を追う中、前半の2バーディー(1ボギー)で首位に。その後12番(パー4)で6メートルを沈めバーディーを奪うと、その後も首位は譲らず。堀と並んだパー5の16番でスコアを伸ばして逃げ切った。

今季は本格的なトレーニングに取り組み、ドライバーショットの平均飛距離は10ヤード近く伸びて248・33ヤードに。昨季3度の2位という悔しさをばねに、「引き離すくらいの勢いでやっていた」とたくましかった。

岡山県出身で、同郷の渋野日向子が2019年に優勝した舞台。支えた門田実キャディー(54)は、その大会で渋野を優勝に導いた人物だった。雨の中で最終18番(パー4)はグリーン左に外してパーセーブしたが、当時の渋野と「全く状況が同じ」と言われたという。さらに、大会前のプロアマ戦でラウンドしたゲストが5年前に渋野と同組だったという偶然もあった。そのゲストからは「(優勝)行けるんじゃない?」と声をかけられたといい、初Vの裏には数々の〝吉兆〟もあった。

第2日(28日)が荒天で中止となり今大会は54ホールの短縮競技に。つかの間のオフは、ネイルサロンで爪をシルバーにあしらい英気を養った。「優勝まですごく長く感じた。また勝利を重ねていきたい」。キラキラしたものが大好きな21歳。プロ93試合目での栄冠に笑みが弾けた。(阿部慎)

■桑木 志帆(くわき・しほ) 2003(平成15)年1月29日生まれ、21歳。岡山市出身。岡山理大付高〜倉敷芸術科学大在学中。4歳でゴルフを始める。コロナ禍で延期された20年度のプロテストに合格し、21年6月にプロ転向。同年の「JLPGA新人戦加賀電子カップ」で優勝。昨季メルセデスランキング10位。164センチ。

★帰りの車中で父と反省会

全試合に帯同する父・正利さん(66)は「何もないですよ」と言いながらも目には光るものがあった。コース情報が書き込まれたヤーデージブックを自ら白紙のメモに書き写し、帰りの車中で娘がプレー内容を書き込む〝反省会〟が習慣。「志帆」の由来は「広い海に帆を広げ、志を持って漕ぎ出すような子になってほしい」。昨年8月にはツアー会場で倒れ、脳梗塞で入院したこともあったが、孝行娘の恩返しに感慨深げだった。