大相撲九州場所12日目(24日、福岡国際センター)西前頭13枚目の王鵬(22)は単独首位だった関脇豊昇龍(23)をはたき込み、10勝目を挙げた。豊昇龍は2敗目。同じく2桁白星を挙げた平幕高安(32)と合わせ、トップに3人が並んだ。両大関は貴景勝(26)が錦富士(26)を押し出し、3敗を堅持。かど番の正代(31)は小結霧馬山(26)に寄り切られ、5勝7敗と後がなくなった。(観衆=4748)

懸賞を受け取って土俵を降りる際、少しだけ頬が緩んだ。幕内5場所目。初めての2桁白星となる10勝目を挙げた王鵬には、気恥ずかしい感情も交錯していた。

「『よしっ』と思って…。でも、土俵上で表情を緩めるのは恥ずかしいこと。憧れる力士像とは違うから」。「昭和の大横綱」といわれた大鵬の孫には、うれし恥ずかしの白星となった。

同学年で初土俵が同じ同期生、元横綱朝青龍をおじに持つ豊昇龍と初顔合わせ。初めて経験する幕内後半戦半ば過ぎの取組に「まだかな、まだかな…と思っていた」。立ち合いは互いに鋭く踏み込んだが、王鵬が引き技で懐へ呼び込んでしまった。土俵際。左へ回り込み、逆転のはたき込み。

大鵬の初優勝は昭和35年の九州場所だった。関脇で13勝して場所後に大関へ昇進。ライバル柏戸(元横綱)の背中を追って2場所遅れの昇進で、綱とり競争を含め「柏鵬時代」の幕開けだった。王鵬は番付で先んじる豊昇龍について「負けたくない。(意識は)ほかの人よりはある」と将来の出世争いを予感させた。

豊昇龍を引きずり下ろし、高安と自身を含めた3人が2敗で並ぶ優勝争い。「燃える。毎日が楽しい。小さいときから夢見ていた(幕内)上位の土俵で相撲が取れるから」。

東京・江東区の深川江戸資料館には32度の優勝を誇る「横綱大鵬顕彰コーナー」がある。初優勝時の優勝額に描かれた化粧まわしもあり、関係者がかつて「王鵬が初の賜杯を抱いたとき、その化粧まわしを傍らに飾れたら…」と願っていた。そのときが、訪れるかもしれない。(奥村展也)