〝種まき〟に徹する広報ウーマンのやる気と根性

〝種まき〟に徹する広報ウーマンのやる気と根性

ボヤージュグループ広報IR室 江頭令子室長

 主にインターネット上でポイントサイト『ECナビ』『PeX』『リサーチパネル』や広告配信プラットホーム『fluct』を運営し、右肩上がりの成長を続けるVOYAGE GROUP(ボヤージュグループ)。その前身、ECナビに、江(え)江(え)頭(とう)頭(とう)令子さんが〝内定者アルバイト〟として働きはじめたのは2006年7月のことだった。当時から「広報をやりたかった」と入社目的が明確だった江頭さん。翌07年1月にめでたく正社員として採用されるも、前任者からの引き継ぎはなく、右も左も分からない状態。転機となったのが、海賊船をイメージした社内バー「AJITO(アジト)」(写真)がつくられた同年10月だった。
 「これはメディアに受けると考え、アジトの写真を持って新聞や雑誌、ネット媒体など手当たり次第に足を運びました。飛び込み訪問もやりましたね。〝会ってなんぼ〟だと思ってましたし、新卒で経験不足でしたがやる気だけはありましたから(笑)。一日に4、5軒まわったこともあります」(江頭さん)

〝福利厚生〟の切り口で勝負
 結果は無惨な失敗に終わる。「エッジが効きすぎて理解できない」というのが主な意見で、見向きもされなかったという。つまり、コンセプト不在だったのだ。が、こんなことでめげている場合ではない。江頭さんは言う。
 「当時、就職活動をしている学生が企業選びに福利厚生制度の優劣を重視しているという報道を見て、〝ユニークな福利厚生〟という切り口で他社の事例も調べ、再びメディアの門をたたきました」
 つまり、単なる社内バーでは、メディア側も取り上げるモチベーションがわかない。ところが、福利厚生を求める学生の傾向を社会現象として提示し、そのなかのひとつとしてアジトの存在を訴えれば、メディアにとっては扱いやすい題材となる。案の定、年末になってまずネット媒体が取り上げたのをきっかけに、年を越すと、各新聞・雑誌での福利厚生の記事が目に見えて増え、こぞってアジトを紹介した。その後は放っておいてもアジトの記事や情報が拡散していく。「うれしかったですね。この時に、取材対象者を誰に割り当てるか、ここが写真にうつるだろうからこうしておこうなどと、細かい部分への気配り、そして、メディアとのお付き合い、対応の仕方を学びました」と江頭さん。

たったひとりで奮闘中
 実はボヤージュグループの広報担当は基本的に江頭さんただ一人。20社近い連結子会社を持ち、グループの年商は200億円を超える上場企業としては異例である。そんな八面六臂の活躍を支えるのが「根気と根性」。「好きでないとできない」とは江頭さんの言。自由奔放で手間を惜しまない彼女の手法は、社内での評価も高い。
 たとえば、『広報江頭の航海ログ』というパワーポイントで制作した壁新聞風のA3チラシ(手書きの添書付き)も、彼女の姿勢を象徴している。これを目立つように黒封筒に入れ、四半期ごとに記者や広報関係者に郵送。カジュアルな内容で、社内情報だけでなく、江頭さんのプライベートも満載。最盛期には約300部を刷っていたため会社の印刷機を占領していたという(現在は中断中)。
 「手作りが大好きなので、楽しかったですね。紋切り型のプレスリリースはつまらないですから。封筒を開けてくれたらラッキーで、読んでくれたら超ラッキーという感覚。何かの折に思い出していただく〝種まき〟です」
 この〝種まき〟という言葉こそが、広報ウーマンとしての江頭さんのコアな部分。通常、企業がメディアに何かを仕掛ける場合、どうしても即効性を期待してしまう。ところが江頭さんの場合、辛抱強く種をまき続けることが、メディアへの露出という「実」をつける早道であると確信している。
 アナログが好きな一方、ここ数年はSNSをうまく使いながら、情報の拡散を試みるようになった。江頭さんのフェイスブックの個人アカウントは1000名以上の記者や広報関係の人たちとつながっている。投稿内容は、やはりプライベート感満載。江頭さんというボヤージュグループの〝名物広報〟を印象づけながら、ニュースリリースなどの情報発信をする場合、フェイスブックの「メッセンジャー」という機能を使用し、興味を持ってもらえそうな記者に配信している。ただ、基本的にメディアの選別はしない。学生の取材さえ受けるという。「どこから情報が拡散していくか分からない」(江頭さん)からだ。また、バーチャルだけでなくリアルな付き合いも欠かさない。社内での仕事はほぼ定時に終わらせ、夜は食事や飲み会の場での情報の収集・提供に費やすことも少なくないという。

社内の協力体制が絶対条件
 外部への発信とともに重要なのが、社内スタッフへのアプローチ。四半期ごとに開催される方針発表会で、江頭さんは、メディア露出の実績などを発表すると同時に、各部署に情報の提供を呼びかける。〝○○のキーワードで話題があれば教えてほしい〟などとお願いしながら、社内に情報提供者を増やしていく努力を継続して行っているのである。
 「以前は、こちらから情報を聞いて回っていましたが、辛抱強く社内にアピールし続けた結果、いまでは各部署から自発的に集まってくるようになりました。社内からの理解と協力が、効果的な広報活動の条件だと思います」
 2015年に社内ベンチャーのゼノシスという化粧品通販会社の役員になり、立ち上げに携わったことも、江頭さんを成長させた。事業を行う側になってみてはじめて、各事業部の苦労やこだわりが実感できるようになったのだ。
 「それまでも、最善の形で情報発信するよう努力はしていましたが、どこか独善的だったのでしょう、行き違いも多かったように思います。しかし、ゼノシス立ち上げ以降は、事業者の気持ちに同化し、もう一歩踏みこんだ深い提案ができるようになりました」
 社内外の人脈を構築し、理解を得た上で、世間にささるであろう情報を辛抱強く収集・発信し続け、また、トレンドや世相を鑑みながら常に切り口を変えていく──広報ウーマンとしての江頭さんが、ボヤージュグループの欠かせない戦力となっていることは間違いない。

COMPANY DATA
VOYAGEGROUP
設 立 1999年10月
所在地 東京都渋谷区神泉町8-16
売上高 208億円(連結2016年9月期)
社員数 317名(2017年6月現在)
URL https://voyagegroup.com/


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