世界初の全自動衣類折りたたみ機『ランドロイド』の開発秘話

世界初の全自動衣類折りたたみ機『ランドロイド』の開発秘話

◎セミナー採録
講師 セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社長 阪根信一氏
さかね・しんいち
1971年兵庫県生まれ。99年米国デラウェア大博士課程修了。2005年IST社に入社。08年社長に就任。11年2月からセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ社長に就任。

日本でイノベーションを起こすことを夢見、昨年末、株式会社リブ・コンサルティング(本社:東京都千代田区)が主催する経営戦略セミナーにおいて、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの阪根信一社長が講演をした。同社は世界初の全自動衣類折りたたみ機『ランドロイド』を開発。「世の中にないモノを創り出す技術者集団」を率いる阪根社長の講演内容を抜粋して採録する。

 私たちセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズには現在、三つの主力製品があります。一つは、世界最高峰の精度を誇る、完全オーダーメードのゴルフシャフト。最新鋭の宇宙衛星開発技術を生かした測定システムと、独自のカーボン設計技術を駆使した製品で、著名なプロゴルファーたちにも愛用してもらっています。二つ目は、睡眠中のいびきや無呼吸を防ぐ世界初の使い捨て鼻(び)鼻(び)腔(くう)腔(くう)挿入デバイス『ナステント』です。2014年に厚労省の認可を取得し、その後2年半で約100万本を売るヒット商品になりました。
 そして三つ目が、洗濯物をたたんだり収納する手間から解放される、世界初の全自動衣類折りたたみ機『ランドロイド』です。2005年から10年余りの歳月をかけて開発し、ようやく2018年に発売できるめどが立ちました。
 日本の平均的な4人家族の場合、ランドリー行為(洗濯から収納まで)に一生のうち1万8000時間を費やしていると言われています。驚いたことに、そのうちの半分にあたる9000時間が、乾いた衣類を折りたたんでクローゼットにしまうまでの作業に費やされているといいます。日数に換算すると375日。およそ1年分にあたります。これを自動化できないかと考え、開発を進めたのがランドロイドでした。

複数のロボットアーム
 ランドロイド(プロトタイプ機)の見た目は、奥行きが薄い冷蔵庫のようなイメージです。側面は木材、表面はガラスを用いて、イタリア家具を彷彿(ほうふつ)彷彿(ほうふつ)とさせる装いに仕上げました。それなりの大きさがあることから、冗談まじりに「なかにおばちゃんが入っているのでは」とツイッターでつぶやく人もいたりするのですが、もちろんそんなことはなく、実際になかで衣類を折りたたんでいるのは複数のロボットアームです。つかんだ衣類がTシャツか靴下かといった具合に、何であるかを画像解析技術と人工知能(AI)で見分けて、きれいに折りたたんでいきます。さらにアイテム別、あるいは家族別の仕分けもしてくれるので、本当に手間がかかりません。
 最大のネックは、時間がかかる点です。1枚たたむのに10〜15分ほどかかります。その衣類の前後、上下、大きさ等を確認しながらの作業になるため、どうしてもそれなりに時間が必要になります。1回の洗濯で20〜30枚の衣類を洗うのが一般的ですが、その量を投入すると、たたむのに4〜6時間ほど要ります。しかし、われわれがリサーチしたところ、「早くたたんでくれるのにこしたことはないが、4〜6時間なら待てる」という消費者が大半を占めました。就寝前にスイッチを入れて、翌朝に仕上がっているのなら問題ないといいます。専業主婦の方も、朝からはじめて昼にできあがるのならそれほど気にならないとのことでした。
 このランドロイドのプロトタイプ機が完成したのは2014年の春のこと。翌年10月に開かれたシーテックジャパン(最先端機器の国際展示会)で初めてお披露目しました。1日10回のデモンストレーションを4日間おこなったところ、毎回400人前後の立ち見ができ、大きな反響を呼びました。ヤフーニュースや海外のネットニュースで大々的に報じられ、一気にランドロイドの存在が世の中に知れ渡りました。

テーマ選定がカギを握る
 いま世界中の人たちがイノベーションを起こそうと日々努力されていますが、そう簡単には本当のイノベーションが起こせていないのが実情です。しかし「テーマを正しく選べば必ずイノベーションを起こせる」というのがわれわれの持論です。テーマを選定するうえで大事にしているのは、三つのクライテリア(判断基準)です。①世の中にないものであること②人々の生活を豊かにするもの③技術的なハードルが高いもの、の三つです。
 世の中にないものを探すのは、実は意外と難しい。「日々の生活の中でこんなものがあればいい」というもののアイデアをいろいろ出しても、よく調べてみると日本では売っていないが欧州では売っていたり、世界中のどこにも売っていないけど、どこかの研究室が論文を書いていたり、ある海外企業が特許を取っていたりします。自分たちがパッと思いつくようなことは、99%の確率で誰かが先にアクションを起こしている感じですね。
 全自動衣類折りたたみ機という開発テーマにたどり着いたのは、2003年から2年間にわたって三つのクライテリアを満たすものを探し続けた過程でした。さまざまなアイデアを出すものの、どれもすでに先を越されているものばかり。どうしてこんなにアイデアがかぶるんだろうかと考えたときに思い当たったのが、私と同様に革新的なものを開発しようと考えている人は圧倒的に男性が多いのではないかということでした。女性の社会進出が進んできたとはいえ、研究開発の現場はまだまだ男社会。考えが似通ってしまうのは当然のこと。それなら女性に意見を求めてみようということで、妻に「家の中で使うもので、世の中にまだなくて、やたら技術的に難しいものはないかな」と尋ねてみると、即答で「洗濯物自動折りたたみロボット」だと言うのです。でもどうせ誰かが先に考えているんだろうと思いつつ、翌日会社に行って特許や論文をいろいろ調べてみたのですが、奇跡的に誰も出していない。ダイヤモンドの原石を見つけた瞬間でした。

「BtoC」へのこだわり
 私たちのビジネスモデルはいたってシンプルです。人々が必要とし、世の中にまだないもので、開発を成し遂げられたら売れるに決まっているものを販売するビジネスです。当然、技術面のカベが立ちはだかりますが、だからと言って技術的にハードルが低いものをやってしまうと、すぐに追随されてしまう。しかし技術的に難しいものであれば、作り上げるまでは確かに大変ですが、それを成し遂げることができたら当面の間は価格競争に巻き込まれずに済みます。
 しかしこのビジネスモデルは見方によっては、最悪のビジネスモデルかもしれません。とにかく、時間とお金が要る。私たちもランドロイドの開発資金を集めるのに非常に苦労しました。一度、3億円を出資してくれるはずだったベンチャーキャピタルが突然、約束を反故にしてきたことがあって、その際には事業継続のピンチに見舞われました。ちょうどお盆休み中で、「これで終わったな」と思うと、隣に寝ている妻や子どもの顔が涙で見えなくなりましたね。その後、別の出資先が運よく見つかり、どうにか乗り切ることができたのですが、ものづくり系ベンチャーの難しいところは初期投資が想像以上にかかるところだと思い知らされました。それでも自分としては、本当にやりがいのあるビジネス領域だと捉えていて、ものづくり系の会社こそが世界最大規模の会社になれる可能性を秘めていると信じています。
 ものづくり系のなかでも、特にBtoC(企業と消費者の取引)のビジネスに挑戦したかったのには理由があります。もともと私は大学を卒業してからBtoB(企業間取引)の研究開発型の会社で働いていました。そこで素晴らしい技術を開発しても、喜んでくれるのは取引先の大企業だけ。その先にいる一般ユーザーには私たちの功績は伝わりません。さらに、世界で唯一の技術を作ったにもかかわらず、取引先から毎年値下げ交渉を繰り返されることに辟易(へきえき)辟易(へきえき)していました。どうせならBtoCの世界で戦いたい──ずっとそう考えていました。
 それと、私が中高生の頃にソニーが『ウォークマン』を出して怒濤の勢いで世界市場を席巻していった様子を目の当たりにしてきたことも、BtoCのものづくりにあこがれた理由の一つです。その後、社会人になってしばらくすると日本の製造業の勢いがだんだん失われていき、「もはや日本からイノベーションは起こらない」と海外からも言われるようになり、それが本当に悔しかった。「そんなことはない、日本人こそがイノベーションを起こせるんだ」という思いのもとに、ランドロイドなどの製品開発に取り組んできました。

まさに「人材バンクジャパン」
 しかし、いくら革新的な新製品を開発したところで、売れなければ意味がありません。当初、私たちには製品プロモーションのノウハウが決定的に不足していました。不特定多数の「顔の見えない相手」にモノを売るという行為をしたことがなかったんです。そこで私は、「苦手なことは他社に任せよう」との戦略をとり、人づてにコーポレートブランディングで輝かしい実績を持つR社を紹介してもらいました。私たちには思いも寄らぬような奇抜なプロモーション活動を仕掛けていってくれたことで、当社の知名度を徐々に高めていくことができました。
 多額の資金を投じて、シーテックジャパンに出展したのも、ランドロイドをうまくプロモーションしたいとの思惑があったからです。また、優秀な人材を新たに採用していくためにも、私たちがイノベーションを起こせる会社であることを大勢の人に知ってもらう必要がありました。結果的にたくさんの技術者たちがうちで働きたいと応募してきてくれるようになりました。
 彼らの履歴書を見ると、一流大学を卒業し、大手電機メーカーのエンジニアとして第一線で働いてきた人ばかり。ものすごく優秀な人たちだと喜んだのですが、年齢をみると52歳以上のバブル世代が圧倒的に多かった。実は彼らもまた、世界中をあっと言わせるような製品を作りたいと夢見てきた人たち。しかしサムスンなどの海外メーカーと価格面で勝負することばかりを迫られ、夢を実現できずにいました。その夢をセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズで叶(かな)叶(かな)えたいと集まってきてくれたのは、本当にうれしいことです。
 そうしたエンジニアの活躍によって、いま恐ろしいほどに当社の技術開発は進んでいます。この国には、優れたエンジニアが掃いて捨てるほどいます。まさに「人材バンクジャパン」。だから日本で必ずイノベーションが起きる。それを身をもって証明するためにも、これからも頑張っていくつもりです。 

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社
創 業 2011年2月
本 社 東京都港区三田1-4-28
URL https://sevendreamers.com/


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