明智光秀が城主だった坂本城は、地上にいっさいの遺構を残さないため「幻の城」と呼ばれています。2021年11月、琵琶湖の水位が低下したことにより、普段は湖底に沈む石垣が姿を現しました。見学者が多く詰め寄せている現地の様子をレポートします。

時代を先駆けた天主の建つ水城
滋賀県というと、城ファンには名城の産地として聖地扱いされているが、一般的には「琵琶湖が大半を占めている」というイメージが強い。とかく関西圏では、琵琶湖しかないことをいじられることが多く、それに対して「琵琶湖の水止めたろか」と反撃するのが、滋賀県民のお決まりのご当地ギャグになっている。

この「琵琶湖の水止めたろか」がジョークではすまない状況が続いている。秋以降の降水量が少なく、琵琶湖の水位が下がっているのだ。例年、この時期の水位は−30cm程度が一般的なのだが、11月下旬の段階で−70cmに迫ろうかというところまで下がってしまい、取水制限を危惧する報道も流れていた。(12月上旬の原稿執筆時点で−55cm程度)

雨が少ないのは困った問題なのだが、城ファンにはある朗報をもたらした。あの坂本城(滋賀県)の幻の石垣が、琵琶湖の水位低下によって姿を現したというのだ。石垣といっても一番下で石垣を支えていた根石(礎石)だけなのだが、地上に痕跡を残さない坂本城にとっては、普段は水面下に沈む根石はたいへん貴重な遺構なのである。

なぜ坂本城は“幻”と呼ばれるのか、簡単にその歴史を振り返ってみよう。