さらに、「城とは何か?」というそもそも論になるのですが、堀にしろ土塁にしろ櫓にしろ人の手によってつくられた防御施設であり、「人工的な軍事拠点」というのが城の基本コンセプトです。だとすると、自然地形を利用しているだけの鎌倉は「城」といえるのでしょうか? 切通しは人工的に切り開いた道ですが、これは都市生活のためのインフラであり、軍事施設ではありません。切通し周辺には人工的に崖(切岸)が築かれたという意見もありましたが、それらは発掘調査の結果、石材の石切り場や屋敷などの造成地だったことがわかっています。

つまり、鎌倉は地理的特徴として「まるで城のように」堅固な都市でしたが、手の込んだ防御施設があったわけではありません。「鎌倉城」というのはあくまでイメージだけの言葉であり、一般的な城とは本質的に異なっていることは理解しておきたいところです。

お城情報WEBメディア「城びと」
2021年1月初出