いまやKindleに溢れているAI画像生成によって作られた写真集の数々。中にはアダルトなものや過激な表現など、これって大丈夫なの? と感じる作品も。そこで、AIを駆使したKindle電子書籍制作・出版プロデューサーのDaiGo氏に、AI画像生成での写真集に関する最新の状況と、出版する場合の注意点を詳しく聞いた。※情報は、執筆時2023年5月22日時点のものです。

現状、AIでのアダルト画像生成に法律での規制がない


Amazonが運営している電子書籍販売サイト、Kindleストアで「AI 写真集」と検索すると、4,000件以上の作品がヒットする。特に水着やコスプレなどのグラビア画像集から、ヌードなどのアダルトな画像集まで、主に“女性”を素材にしたものが目立っている。

「Amazonのメインユーザーが20〜40代のサラリーマンとされているので、グラビアや18禁の対象となるアダルト系をテーマにすると人気が出やすく、それらのAI画像集が乱立している状況です。

Kindleは出版する際に、ヌードなどのアダルトジャンルか、その他一般ジャンルかを申請するのですが、購入者としては、なるべくアダルトジャンルで検索したくない心理が働きます。なので、水着だけど面積が少なかったり、『若く見えるけど成人』という設定でのグラビアだったり、ギリギリのグレーゾーンを攻めた作品を一般ジャンルとして販売している方が多いですね」(DaiGo氏、以下同)


DaiGo(Kindle作家名) 氏。本名 渡邊 大悟。Kindleビジネスコンサルタント・出版プロデューサー。DIYマーケティングラボ代表取締役。過去に350冊以上のKindle本を出版。講師としても活躍中


ただし、今年5月頃からはAmazon側での規制が厳しくなってきているという。一般ジャンルでのグレーなAI写真集の販売は難しくなってきており、ここ最近ではアカウント停止にまで追い込まれている人もいるほど、日を追うごとにその厳しさは増している。

「特に児童ポルノや、タイトルに露骨なアダルト表現を含むものはAI生成画像であっても一発アカウント停止、というパターンが増えてきています。とは言え、それはあくまでAmazon側が企業として設けている規制。法律でAIによるアダルト画像生成禁止がされているわけではありませんし、AI画像に対する著作権を誰が持つのかさえ、明確なルールが決まっていない状況です」

“AI画像に対する著作権のルールが決まっていない”ということは、こういう問題が起きる可能性があるという。

「例えば『女優のAさん風の美女のグラビア』をAI画像生成で作って販売したとしても、違法にはならないのです。それを見たAさんが著作権、肖像権の侵害で訴えたとしても、本当にAさんを意識して作られたのかをどのように証明すべきか、法律ではまだ決まっていないんですよ。技術の進歩に法整備が追いついていない状況です」


初心者でも10時間あれば、
3ヵ月で40万円を生むKindle本の出版が可能


では、実際にAI画像生成で写真集を作ることは、どれくらいの難易度なのだろうか?

「正直、簡単にできます。様々なツールがあるのですが、現状、広く使われているのは『Stable Diffusion(ステーブル・ディフュージョン)』という無料ツール。プロンプトと呼ばれる“条件”を英語で入力すると、数秒後に自動で画像を生成してくれます。2022年の8月にリリースされて、日本では今年の2月頃から流行中。大量のAI画像写真集が販売されるようになったのもこの時期です」

DaiGo氏もこのブームに乗り、2023年2月にAI生成画像を使ったKindle本を出版している。

「私の場合は、単純な写真集ではなくAI画像生成マニュアルを出版しました。ChatGPTとGoogleドキュメントを連携することでAIイラストやAIの人物写真、風景写真を作る方法を一冊にまとめたものです。この書籍やChatGPTのノウハウ書籍だけで現在までの約3ヵ月で40万円ほどの収入があります。

ちなみに、AI写真集を販売するなら月額読み放題サービスの『Kindle Unlimited』がオススメ。読者は月額料金のみで、本の購入に追加料金がかからない分、手に取ってもらいやすいからです。ロイヤリティは読まれたページ数によって支払われるので、1枚の画像でページを埋めやすい写真集は、書籍より稼ぎやすいというカラクリもあるんです」


画像も文章もAIで生成し、40万円を売り上げたDaiGoさんの書籍。「悪用厳禁!2023年注目度№1のAI革命ChatGPTで実践する究極のズボラ副業」。「悪用厳禁!2023年注目度№1 ChatGPTを使ったAI画像」


一冊を出版するまでに要した制作時間は?

「ChatGPTのノウハウ書籍の方はテキストも2万5000文字程度あったのですが、その執筆もAIで90分程度で完成。解説画像なども入れて、執筆から制作、出版まで7時間ほどで完了しました。どちらかというとAI画像のノウハウ書籍については、画像生成に時間がかかってしまい……。当時は私もあまり知識がなかったので、思うような画像が生成されず、条件を微妙に変えながらの修正が必要で。画像と文章の配置などのデザイン作業も含め、出版までトータル10時間でした」

多少時間がかかるとはいえ、AIを使用しなければ数週間から1ヶ月ほどはかかるkindle書籍の出版を、たった一人で1日で成し遂げ、しかも現在まで定期的な収入が入っているというから驚きだ。

「でも、私が作ったAI執筆やAI画像生成のマニュアルは、出版から3ヵ月しか経っていないとはいえ、情報としてはもう古いんです。日々恐るべきスピードでAI技術は進歩しているので、出版する側もそのスピードに対応しなければなりません。この本だってAI技術を使わずに通常の制作過程を踏んでいたら、まだ出版に至っていなかったかもしれません。つまり、出版される頃には読者にとって意味のない情報になってしまうのです」


日本語対応のAI画像生成サービスも充実。
スキル0でも使いこなせる時代に


しかし、ここでややハードルに感じるのが、AI文章生成サービスのChatGPTも、AI画像生成サービスのStable Diffusionも、英語対応だということ。

「中身はStable Diffusionだけど、日本語での条件(プロンプト)入力に対応しているサービスもありますよ。例えば、LINEのトーク画面で使用できる『AIイラストくん』はとても簡単。友達追加をして、トーク画面でイラスト、人物、風景の中からジャンルを選び、条件を日本語で指示するだけ。数秒で画像が生成されます」

実際にAIイラストくんで生成された画像を見せてもらった。

「例えば、『食事をしている女の子』と『食事をしている美女』では、意味は同じでも、生成される画像が異なります。前者は『女の子』というワードをAIが『若さ』として認識するので、未成年にも見える比較的若い女性の画像になり、後者は成人女性の画像が生成されます。また、AIは常に学習し続けているので、同じ条件を入力しても、同じ画像が生成されることはありません。同じ人物風の顔で複数枚画像を生成したい場合は、条件を固定する方法もありますが、これはできるサービスが限られています」


「食事をしている女の子」という条件で生成された画像


こちらは「食事をしている美女」という条件。現在、AIイラストくんは招待制で使用可能


専門知識がなくても、誰でも簡単にAI画像の生成ができる。あとはこれらの無料ツールで生成した画像を集め、写真集としてKindleで販売すればいいだけ。AI写真集の出版は、限りなくハードルが下がっているようだ。

「ちなみに、AI文章生成のクオリティも日々、進化しています。例えば『仮想通貨で稼ぐ方法』というテーマで文章を書かせると、10個ほどの章立てを自動で作ってくれて、約1万〜2万字の執筆が数分で完了します。特にAIは事実に基づいた客観的な文章を生成するのは得意なので、整合性も持ち合わせた内容となっています。

逆にお悩み相談などの人の心情に寄り添うことや、事実から一歩進んだ『より専門的な内容』などはまだまだ苦手。そういった部分は人間のチェックが必要です。とは言え、AI出版はもはや誰でも簡単にできる作業になっています。だからこそ、使う側のモラルが大切で、法整備が整っていないからといって、何をしてもいいわけではありません。AIはあくまで生活を豊かにする技術として、正しく使ってほしいと願っています」

誰でもAIで出版できる時代に、どう使うかは自分しだいだ。

取材・文/菱山恵巳子