「娘が忘れ物がひどく、すぐにモノをなくします。整理整頓が苦手で部屋はカオス。使用済みナプキンを放置する神経がわかりません」そんな母親の悩みに精神科医の答えは? 思春期の母娘が抱えがちな悩みに精神科医がアドバイスする「思春期デコボコ相談室 母娘でラクになる30の処方箋」より一部抜粋、再構成してお届けする。

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思春期脳はマルチタスクが苦手



一人前のクチをきくくせに、基本的なことができなかったりする、それが思春期です。なぜなら、脳のつながりが完成していない思春期脳は、一度に複数のことをするのが苦手。著しく注意力散漫で、周りで起きていることにきちんと注意を払うことができないんです。

うちにも娘が2人いるんですけど、昔から本当にモノをよくなくす子たちで、鍵なんか数えきれないくらいなくしてます。歩いているうちにね、いつの間にか手からなくなっているみたいなんですよ。

定期券はなくす、財布はなくす、スマホの置き忘れもしょっちゅうで、「iPhone を探す」(登録したiPhone の位置を示したり音を鳴らしたりできるアプリ)に何度助けられたことか。ぼーっとして転んでケガしたり、しょっちゅうモノを壊したりするもんで、小さい頃から子ども賠償保険を1億円かけてきました。

娘の部屋はごみの山です。業を煮やして部屋を掃除したら、飲みかけのペットボトルが10本ほど転がっていたと母親は怒り心頭ですが、娘は勝手に片づけられたことを嫌がるふうもなく、むしろ〝ラッキー!〞とばかりに喜んでる。私は妻をなだめるのにいつも苦労しています。

ナプキン問題もよくありますよ。あるお父さんはお風呂に入ろうとして、ふと脱衣所の鏡を見たら、使用済みのナプキンがぺたっと貼ってあったって(笑)。これからやるべきことを覚えておく「展望的記憶」は思春期になっても小学生レベルで止まっていますから、「あとで捨てよう」と思ったことも忘れているんでしょう。

まあ、よそでやったら問題だけど、家の中でのことなら大目に見てあげてもいいんじゃないかなと私は思いますけどね。

こういった「不注意」は、発達障害のAD/HD(注意欠如・多動症)とみなされることも多いです。でも、「不注意」は、思春期女子によく見られる傾向で、お母さんたちも自分の子どもの頃を振り返ってみると、思い当たるところがあるのではないでしょうか。

不注意が目立つ子には、やるべきことの優先順位を決めて、根気よく丁寧に説明しましょう。指示するときは一度に1つか2つに絞るのがコツです。そうやって、段取りを組ませる訓練をしていくことで、少しずつ脳が鍛えられます。

文/大下隆司 写真/pixta


思春期デコボコ相談室 母娘でラクになる30の処方箋

大下隆司

2023年3月24日

1,760円(税込)

四六判/224ページ

ISBN: 978-4-08-781648-8

これって思春期? それとも病気? 精神科医が、思春期の母娘が抱えがちな悩みに回答しながら、「自己発達力」「自己治癒力」を引き出す育て方をアドバイス! 父・息子も必読!!

どんな子も発達に偏りがあり、進んでいる部分と遅れている部分がデコボコしているもので、それは一人ひとりの個性。発達障害と呼ばれるものは、その延長線上にあって偏りが目立っているというだけのこと。(「はじめに」より)

本書に収録の「お悩み一覧」(もくじより)

【1章 デコボコOK! 乱高下しながら成長するのが思春期です】
気分のムラに振り回される /すぐキレる/話し合いにならない/一方的にしゃべり、話を聞いてない/すぐパニくる!/忘れっぽく、片づけられない/スローすぎる/喫煙&飲酒/ゲーム感覚で万引き
【2章 思春期娘と更年期母は「ホルモン星人」バトルがあって当然です】
娘も母も不調だらけ/月経前のイライラ/彼氏にどっぷり/ダイエットを繰り返す/女子グループのLINE外し/娘がいじめの加害者に……
【3章 眠りの乱れが思春期をタイヘンにする】
朝、起きてこない/ベッドに入ってもスマホ/過眠から不登校/睡眠薬をほしがる
【4章 いい子が危ない!? ときには引きこもりも必要です】
反抗期がないけれど……/見知らぬ相手とのツイッター/赤面恐怖/「できる子」が引きこもりに……/赤ちゃん返り
【5章 これって思春期? それとも病気? 薬で治せるの!?】
包丁を持ち出した/教師に服薬をすすめられる/マスクを外せない/ 思春期うつ病?/初期統合失調症と診断されて/薬がどんどん増える

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