琵琶湖湖畔の芝生で、泳ぐジェスチャーをしながら一心不乱に笑う6人の中年女性たち――。3月23日、インスタグラムに投稿された「びわ湖に飛び込んで笑う」と題されたリール動画(ショート動画)が750万回以上も再生されるなど(4月24日時点)、大バズリ。

動画を投稿したのは滋賀県大津市在住の「笑いヨガ」講師、“笑顔の女神 ぶんぶん”こと坪久田文子(つぼくた・あやこ)さん(59)。一見するとシュールな光景だが、この動画の真意は? そもそも「笑いヨガ」って? 本人に聞いてみた。

当初はアンチコメントが殺到

――インパクト抜群の「びわ湖に飛び込んで笑う」。あの動画で何を表現したかったのでしょうか……?

坪久田文子(以下、同) あれはママ友とデイキャンプに行ったときにふざけて撮った動画なんですが、私は日ごろ、笑いヨガ講師として活動するなかで、楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなるということを実感するんですね。

イヤなことがあっても腐らず笑う。楽しい人生にしたかったら、笑ったり、喜んだり、スキップしたり、歌を歌ったりってことを意図的にやるのがすごく大事。

笑顔を広げて幸せになってもらいたいと、インスタグラムには似たようなリール動画を頻繁に投稿しています。

――それがまさかの大バズリ! コメントを見ると「元気が出ました」「一緒に笑いたい」など好意的なものが目立ちますね。

実はこの動画を最初に投稿したのは去年8月で、そのときは「宗教みたい」「狂ってる」というアンチコメントがバーッときて炎上しちゃったから、すぐに削除したんです。
でもしばらくたって「ああいう動画がまた見たい」と言ってくれる人がいたから、誤解を与えないように文言をつけ加えたりして再投稿しました。

今はアンチコメントがきてもスルーしてます。アンチの裏にはその数倍、喜んでくださってる方々がいますから。

世界115ヶ国に笑いヨガ愛好者が

――笑いヨガの真髄ですね。というか、ごめんなさい。当たり前に使っちゃってますけど、そもそも“笑いヨガ”って何なんですか?

笑いヨガは『ラフターヨガ』とも呼ばれていて、1995年にヨガの本場・インドの内科医、マダン・カタリアが考案した、「笑い」と「ヨガの呼吸法」を組み合わせた、心身ともに健康になれる体操です。日本ではまだ知名度が低いですが、世界115ヶ国以上に愛好者がいるんですよ。

10分『あはははは!』と大笑いすると30分間の有酸素運動と同じだけのカロリーを消費するから、講座は楽しいけどすっごく疲れる(笑)。

――大笑いすると腹筋が痛くなりますもんね! 先生が笑いヨガと出会ったきっかけは?

私には4人の子どもがいて子育てに苦労していたんです。そんなときにヨガ講座があったので参加してみたら、それが笑いヨガで。

最初はすごくビックリしたけどやってみたら「なんかおもろいやん!」とハマってしまい、ラフターヨガリーダーの資格を取得して、今はラフターヨガティーチャーの資格を持っています。

――リーダー? ティーチャー?

NPO法人「ラフターヨガジャパン」が発行している資格で、ラフターヨガリーダーは講座を自由に開催できます。そして、その上のラフターヨガティーチャーになると、ラフターヨガリーダーの養成講座を開催できます。

――講座はどのような内容なんですか?

私は月1回、近所のカフェをお借りして午前中は笑いヨガで笑って、お昼は「ラフターランチ」といって、そのカフェで昼食を食べるという活動ですね。もう10年くらい続けてます。
 

――ちなみに先生は『笑顔の女神 ぶんぶん』と名乗っていますよね。

ラフターヨガネームですね。名前が文子(あやこ)で、もともとあだ名が「ぶんちゃん」だったので、それをもじりました。“笑顔の女神”は友達がつけてくれました。その名に恥じないようにいつでも明るく、みんなに笑いを届けたいと思ってます。

笑顔の女神に訪れた笑えない過去

――とはいえ、先生が笑いヨガに出会って以降も、辛くて笑えない時期があったのでは?

2013年3月にラフターヨガリーダーの資格を取ったのですが、その年のゴールデンウィーク明けから子どもが不登校になったり、父親の介護も重なったりですごくしんどい時期がありました。でも1歩外に出たらラフターヨガリーダーとして明るく笑って、笑顔と幸せを届けようって自分で自分を鼓舞するような気持ちで毎日を過ごしていました。

――まさに「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しくなる」と。

そうですね。その影響か、子どももどんどん元気になって、無事就職して今では楽しそうに仕事をしてます。だから、子どもが不登校で悩んでいるお母さんたちに「母が笑えれば、子どもは大丈夫」ということを伝えたいですね。

――インスタには「部活応援」「勉強応援」など若者を応援する笑いリール動画をたくさん投稿されていますね。

今年3月にとある学校の運動部の子から「もうすぐ県大会なので、応援動画を撮ってください」という依頼がきたんです。それで子どもたちに笑って、幸せになってもらいたいと応援動画を投稿したらすごい反響で。動画をあげればあげるほど依頼がくるようになって、多い日で1日20件くらいくるようになりました。
さすがにそれらすべてに応えていると生活に支障をきたしてしまうので、今は募集を締め切ってますが、それでもまだ毎日のように依頼がきますね。
 

――すっかりインスタの人気者! 今後、どんな活動をしていきたいですか?

子どもは就職できたし、父は他界して、いろいろと肩の荷が下りたので、これからは自分がやりたいことをやろうと思っています。
ゆくゆくは笑いヨガ講師として起業したいし、不登校の子の親御さんに向けたラフターヨガ講演会や若い人対象のラフターヨガリーダー養成講座もしたいです。

そして、私の笑いで滋賀県の健康寿命を伸ばして、いつかは琵琶湖を“笑いの聖地”にしたいですね!

                 ※

ちなみに、厚生労働省の「令和2年都道府県別生命表」によると、滋賀県は男性の平均寿命が日本一、女性の平均寿命が全国2位。この数字も、笑顔の女神の活動のおかげ……?

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班