北海道余市町の北星学園余市高は4月22日、大麻を吸引した2年生の生徒3人を退学処分にした。友人同士だった3人は昨年の4〜5月ごろからインターネットで購入した大麻を町内の海岸で繰り返し吸引していたという。2003年にドラマで大ヒットとなった『ヤンキー母校に帰る』(TBS系)のモデル校で知られ、2016年は入学者減少のため存続危機になったことが大々的に報じられた同校。2001年には薬物問題で生徒79人が処分された過去もある。現在は服装も髪型も自由な同校であるが、大麻を巡る、ある〝規則〟が議論されている。
 

大麻はSNSを用いて入手された

「社会的に違法薬物が手に入りやすい状況にあるが、改めて違法薬物の危険性を生徒に伝えていきたい」

4月25日、大麻を吸引した生徒3人の処分を明らかにした北星学園余市高の今堀浩校長は地元メディアの取材にこうコメントした。余市町内の海岸で複数回にわたって大麻を吸引した3人は『気を紛らわせるためだった』と事実を認めており、4月24日に同校は余市警察署に連絡をしている。事の発覚について学校関係者が内情を明かす。

「昨年5月から9月ごろにかけて2年生の男子2人と女子1人で町内の海岸などで大麻を吸っていました。そのことを知った生徒が教員に相談をしたことで発覚しました。

余市町はほぼ全域が海岸に接していて、人気がない海岸はいくらでもあります。また余市高の多くの生徒は寮生活なので寮で吸うわけにもいきません。誰にも見つからないよう吸うには海岸が最適だったのかもしれません」

大麻はSNSを用いて入手され、吸引していた3人の中には寮生活をおくっていた生徒もいたという。学校関係者が続ける。

「3人はわかりやすい不良というタイプの生徒ではありませんでした。報道では3名の退学処分となっていますが、他にもう一名謹慎処分になっています。

この一名については3名が大麻を吸引していることを知りながら学校側に報告せず『うちの父親も大麻を用意できるぞ』などと言っていたことが問題視されて謹慎処分になりました。ただ謹慎になった生徒の父親は本当に大麻を準備できる環境でもなく、生徒が虚言で周囲から注目を浴びたかっただけの可能性が高い」

大麻柄のネックレスやアクセサリー、お香を炊くのも禁止 

余市高は2001年に大麻・シンナーなどを使用したとして77人を自宅謹慎、使用回数の多かった2人に自主退学を勧告している。当時は「第5次薬物汚染期」と呼ばれ、薬物の使用が中高生らにまで広まり少年の薬物乱用が問題視されていた時代だ。

前出の学校関係者によると余市高はこのときの薬物問題に今も引きずられているという。

「このときも生徒が大麻を使用したという情報があり、学校側が名乗るよう呼びかけたのですが、入学前に使用したケースも含め合計79名が『これまでに大麻などの薬物を使用したことがある』と自己申告したんです。

以来学校側は『二度と起きないよう防止策をとる』と薬物問題に毅然と立ち向かってきた。ただそれが少しいきすぎていると一部の生徒の間で話題になっています。服装や校風が自由なのが同校の売りですが、そんな中、〝大麻柄〟の洋服を学校に着て行ったり、寮で着るのも禁止事項になっているんですよ」

どういった意図から禁止しているのだろうか。

「大型量販店などで売っている安いハーフパンツのなかには大麻柄のものがありますが、大麻そのものを知らなかったり、意識せず着ている子もいますよね。また、大麻柄のネックレスやアクセサリーもダメということになっています。

学校側は大麻の柄を見ると大麻を吸いたくなるのではないかと危惧しているんですよ。他にも寮で生活している生徒はお香も禁止されています。大麻の匂い隠しになるからとのことです。

大麻の危険性をきちんと伝えるのは大切なことですし、大麻を吸うのは法的に見ても絶対にダメです。ですが、それと大麻柄のものを身に着けることを一緒にするのは少し違うのかなと思っていますし、大麻問題については過剰反応しているフシはあると思います。

大麻とは全然関係ありませんが、寮では麻雀などのギャンブルも禁止されていますね」(学校関係者)

「薬物を肯定するようなファッションは控えてほしい」

同校は2015年12月、入学者減少から赤字経営が続き「存続危機」が報じられた過去もある。今回の件に関して学校側の“言い分”はどうなんだろうか。取材を申し込むと今堀校長が対応した。

「大麻吸引に関わっていたのは海岸で吸引していた(退学処分となった)3名だけです。謹慎処分の生徒については『間違ったかばいかたをした』からで、詳細についてはまだ在校している生徒になりますし、控えさせてください」

――4月22日付で退学処分になったということですが、吸ってしまった理由はどのように聞いていますか?

「指導部とか担任が聞き取りしていますけど、ざっくり言うと『気を紛らわすため』というようなところですね」

――2001年に79名の処分者をだした大規模な薬物事案があったと思いますが、それ以降校則などが厳しくなった面はありますか?

「(本校は)薬物がメインではないんですけど、社会的に若者に関わる問題に取り組んできました。そんななか薬物が一番、表面化しやすい。2001年のときに大きな学びが我々もあったので、教材とか講演という形で子どもたちに伝えております」
 

――大麻に関わる禁止事項で、大麻柄の洋服やピアスなども禁止されているとお聞きしましたが、それはどういった理由があるのでしょうか?

「基本的にそれ(大麻)を肯定的に見るようなことをしてほしくないということです。ファッションとして扱うということはそれを肯定的に見ているということが考えられますし、やはり薬物で仲間を失うということを考えたときに、薬物を肯定するようなファッションというものは控えてほしい。

だから自宅の部屋で着飾る分には、そこまでは我々も立ち入ることはできませんが、学校に着てきたり、寮や下宿などの他の生徒が出入りするようなところではやめてほしいと生徒に理解してもらってます」

――これらの決まりは校則として決めている?

「着てきたからといってそれで退学とか謹慎とかではないですけど、ちゃんと理由を説明して理解してもらっています。また、それら(大麻柄の洋服)は寮には置いておかないで、自宅に送り返してもらったりもしていますね」

 

――生徒の中には「ただの柄なのでそれはやりすぎではないか」という声もありましたがどう思われますか?

「それは直接そういう形で生徒が訴えてきたら話をしながら理解してもらうということになるとは思います。最初は『何で?』という生徒は当然いましたが、説明しながら理解してもらってきています」

――少年が大麻事案に関わることが増えてきていることについてはどのように思いますか?

「我々も今回の件であらためて、スマホでSNSを使って非常に簡単に薬物が手に入る状況があるということがわかりました。Xなどで情報を集めて、その後は発見しづらいテレグラムを使いながらやり取りをしているなどの実例を見ると、間違った形で関心や興味を持つとそういう情報がどんどん手に入るという今の社会状況の危険性があるかと思っています。

大麻を肯定するサイトも多くありますし、偏った情報が入ってきてしまうインターネットの特性、危険性もあると思っています。だから我々としては薬物防止講演もそうなのですが、正しい情報で峻別を含めて学んでほしいと思っていますし、そういった教育が必要になっていると思います」

今堀校長の思いが生徒や学校関係者に届いているかは不明だが、これまで多くの高校中退者や不登校生徒たちの“受け皿”となってきた余市高だけに難しい問題でもあるようだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班