東京・品川区戸越の住宅で5月23日に、火災のあった住宅内で母親と3人の子どもが首や胸などを切られた状態で亡くなっているのが見つかった事件で、警視庁の司法解剖の結果、子どものうち一人と母親の死因は失血死で、残る二人の子どもは一酸化炭素中毒死とみられることがわかった。心中事件の疑いがあるとみて殺人や放火容疑で捜査している警視庁は、現場で負傷して発見された40代の父親Aさんから事情を聴き、事件当時の両親の行動の解明を進めている。

長女と長男は刃物で切られた後、有毒な煙を吸って亡くなった 

亡くなったのはこの家に住む母親の高波冬美さん(37)と、Aさんの間に生まれた長女で小学1年の後藤鈴さん(6)、いずれも幼稚園児の次女・玲ちゃん(3)、長男・信ちゃん(2)。4人とも上半身を複数、刃物で切られたり刺されたりしており、一階の寝室周辺で見つかった。家の中からは刃物が発見された。

一階のリビングに散乱した衣類などが燃えていたが、火は燃え広がらなかった。また冬美さんと事件の3日前に離婚が成立していた元夫のAさんも首などに傷を負い、煙を吸い込んでいて搬送され、治療を受けている。

警視庁の調べでは冬美さんと玲ちゃんは刃物で切られたことによる失血死とみられ、鈴さんと信ちゃんは一酸化炭素中毒が死因とみられる。

「事件当時、家の窓や玄関はすべて締め切られており、火が出た部屋は煤で真っ黒でした。締め切った空間で酸素が欠乏する状態で物が燃え、一酸化炭素が発生したようです。警視庁は3人の子と冬美さんが刃物で切られた後、部屋に火がつけられた可能性があるとみています。鈴ちゃんと信ちゃんは刃物で切られた後も息があったのに、有毒な煙を吸って亡くなったようです。家には外部から侵入した形跡がなく、警視庁は現場で自殺を図った疑いがあるAさんから事情聴取を進めていますが、ネット上で噂されているような単純な事件ではない。現場の状況からは4人が1人に殺害された可能性は低く、特に3人の子が切り付けられた経緯については複雑なようで、慎重に調べを進めています」(警視庁担当記者)

現場では事件発覚前日の5月22日夜、Aさんが玄関前で一人でたたずんでいる姿が目撃されたほか、ガソリンのようなにおいも漂っていたと近所の人が証言しており、この日の夜に異変があった可能性がある。

SNSなどに記されたプロフィールによると、Aさんは2002年から12年までの10年間、美容師として勤務しながら「店舗開発やマーケティング、人材育成を経験」したとしている。その後、約11年間は介護職に就き、動画を使用した研究の企画発案や人材採用の役目も担ってきたと紹介している。昨年勤めていた介護施設を退職して動画編集業を開始。ちょうど1年前の2023年5月27日に「X」に「動画編集案件獲得に向け営業スタートで。」と書き込んでいる。

「1年くらい前、彼女は心を病んでしまって休職、上司と合わなかった」

介護職に就いていたときにAさんは勤務していた品川区内の介護施設でケアマネージャーだった冬美さんと知り合い、結婚している。当時の同僚は「(Aさんと冬美さんの)夫婦仲はとてもよかったと思いますよ。冬美さんに『子どもが3人もいて大変ね〜』と水を向けると『でも、ウチの旦那はよくできてるから』とか『旦那は優しい人だから...』とかのろけていたぐらいだし」と話している。

この介護施設は内規で、夫婦は一緒の職場で働けないとしており、結婚後冬美さんは品川区内にある系列の別の施設に移っている。その施設の広報誌に冬美さんは「ご家族が大切なご利用者様を施設へ預けておられるように、私も子どもを保育園へ預けています。保育園へ迎えに行った際、今日はどう過ごしていたのか、ちょっとしたことでも、少しでも伝えていただけると嬉しいものです。(中略)私は大切な子どもを保育園に預ける側になり、改めてご家族の気持ちを知ることができました。これからさらにご利用者、ご家族の気持ちに寄り添った援助をしていきたいです」という文章を寄せている。

しかし冬美さんの知人は「1年くらい前、彼女は心を病んでしまって休職し、一度は復帰したけど、またすぐに休職して、それ以来ずっと仕事を休んでいるんですよ。理由は上司と合わなかったからだと聞いています。彼女はストレートな性格で上司と揉めることがありました。休職は(仕事で)精神的にまいったのが原因だと聞いています」と証言。

冬美さんは職場環境が原因とみられる心の不調で最近出勤できる状態でなかったことがわかってきた。
またAさんが務めていた介護施設を退職し、動画編集業を始めたのも1年前のことで、時期が符合している。

すぐ近所に住む人は「家族仲が悪いとかDVがあったとか、そういう気配は一度も感じたことありません。夜に家の中から子どもが泣き喚いたり、ケンカしたりするような声も聞こえたこともありませんでした」と証言する。
また近所の飲食店の従業員は「子どもと一緒にいるのを見かけるのは基本旦那さん(Aさん)が多かった。小学校に上がった娘さん(鈴さん)がまだ小さい頃、朝保育園だか幼稚園だかに連れて行ってたのも旦那さんだったね。ヒョイって自転車の後ろに娘さんを乗せていた。娘さんの帰りのお迎えも旦那さんだったよ」と話す。

刑事さんから「何か思い出したことはありませんか」と毎日聞かれる

周辺からは家庭内の不和をうかがわせる話はなく、子どもの世話も夫婦で分担していたことが垣間見える。Aさんは、心を病んで出勤できなくなった冬美さんをそばで支えるために仕事をやめ、自宅でできる仕事を始めた可能性もあるとみられるが、その二人がなぜ離婚し、その後もAさんが同居し続けたのかは不明で、これが事件とかかわりがあるのか、警視庁は詳しく事情を聴いているもようだ。

 

26日夜、現場検証が3日ぶりに終わった自宅の玄関前には、夫婦がかつて3人の子を乗せて走った2台のママチャリと、家族みんなで餌をやっていたというメダカが飼われている水槽と、ミニトマトのプランターがそのまま置かれていた。

近所の男性は「今年、小学校に上がった鈴ちゃんは元気なお嬢さんで、夕方5時ごろに学童保育が終わって帰ってくるときはいつも『ただいま〜』ってあいさつしてくれていました。お父さんもお母さんも、最近もときどきは見かけましたが異変は感じず、刑事さんが事件後、毎日来て『何か思い出したことはありませんか』と聞いていきましたけど、本当に気づくようなことはなかったんです。夫婦の間で何があったのか私たちには知りようもないんですけど、本当にかわいそうなことになりました」と辛そうな表情で語った。

同じような悲劇が繰り返されないよう、徹底した原因の解明が待たれる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班