数学教師として勤務していた中学校から失踪して15年。網走(北海道)から尾道(広島県)まで、記憶を呼び戻しながらかつて失踪した道のりを旅して過去にけじめをつける実録コミックエッセイ。現実からいつも逃げてしまう人、逃げたいのになかなか逃げられない人、逃げることなく頑張ってきた人、戦うあなたへ贈る。(2024年3月31日まで)
「私の夢が……」20日以内に探し出さないと息子の教員免許が失効する!
思いつめた母が向かった先は…(5)
【作者・中川学より】
父は酒が好きでした。毎晩のように飲んで帰ってきました。
バタバタと家に入ってきて、千鳥足で壁にぶつかりまくりました。そして嘔吐。
「ガーンバーロオー」と謎の歌を歌っていました。
歌っていたと思ったら怒り出しました。空に向かって。
父は帰ってきてからも飲み続けようとしました。
酒を隠す母、それを見つける父、酒がいかに体に悪いかを説く母、それでもコップに注ごうとする父。
私が自分の部屋で寝ていると、「マナブー」と部屋に入ってきました。
そして「起きろぉぉぉ」と迫ってくるのです。私は怖くて寝たふりをしていました。
これらの一連の行為を1時間半くらい繰り返したあげく疲れて寝る、というのが父のパターンでした。次の日は二日酔いで機嫌がすこぶる悪く、『財布がない、時計がない』と言っていろいろなところに電話をしていました。
父の酒好きは地元でも有名でした。私が中学生の時、友達4人で同級生のAくんのお父さんに夕食をおごってもらう機会がありました。
「お前ら好きなもの頼め、ジュースも頼んでいいんだぞ」
「やったー!」「ありがとうございまーす♪」
みんなホクホク顔です。
「ところでお前ら、どこの子だ?君は?」「○○自転車店の息子です」「君は?」「□□団地の楠本です」「君は?」「△△農園の中田です」「君は?」
私の番です。「○△区の中川です」。するとAくんのお父さんは言いました。
「あ〜酔っぱらいの息子ね」
私の中に「父さんを侮蔑された!悔しい!」という思いと「俺カンケーねーし、親は親だし!」という思いが生じました。Aくんのお父さんに一言言ってやらねばとも思いましたが、夕食をおごってもらっている手前、結局何も言えませんでした。
そんな父ももうこの世にはいません。享年64。
酒のせいもあったのか、早すぎる死でした。
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『探さないでください』(平凡社)
中川学
1100円
160ページ
ISBN: 978-4582287998
失踪する前、失踪したら、失踪した後どうなるか。
数学教師として勤務していた中学校を失踪して15年。網走(北海道)から尾道(広島県)まで、
記憶を呼び戻しながらかつて失踪した道のりを旅して過去にけじめをつける漫画。
『くも漫。』前夜を描いた実録コミックエッセイ。
現実からいつも逃げてしまう人も、逃げたいのになかなか逃げられない人も、逃げることなく頑張ってきた人も。