8月11日に公開される映画『バービー』は、マーゴット・ロビーとライアン・ゴズリングという、超人気俳優がバービーとケンを演じることが話題に。謎に包まれていたストーリーを先出しすると共に、人気スターふたりの変幻自在なキャリアを振り返る。(トップ画像:©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.)

『バービー』の気になるストーリーは?


『バービー』撮影中のマーゴット・ロビー(左)とライアン・ゴズリング。
Backgrid/アフロ


4月にティザー・トレイラーやポスターが公開されて以来、世界中の映画ファンの注目を集めている『バービー』(2023)。ポップなカラーが満載の世界観や、バービーとケンを演じる役者たちのハマりっぷりに誰もがニンマリ。

詳細はまだ明かされていないものの、4月25日にラスベガスで行われたシネマコンで披露された映像によると、大まかなストーリーはこんな感じ。

バービーランドで幸せに暮らす“完璧な”バービーの生活が、ある日、微妙に変化し始める。トーストが焦げたり、お湯が出なくなったり、ハイヒール仕様だった足がペタンコになったり!? 不思議に思ったバービーは別のバージョンのバービー“ウィアード・バービー”を探し出す。


映画にはさまざまなバージョンのバービーとケンが登場するよう
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.


風変わりな彼女から「いつもの生活に戻ることもできるし、世界の真実を知ることもできる」と教えられたバービーは、ケンと共に“完璧とはほど遠い”リアルワールド(人間世界)へ向かい、ふたりの冒険がスタート。一方、バービーがリアルワールドに行ったことを知ったマテル社(バービーを販売している玩具会社)のCEOは大激怒!

西海岸と思われるリアルワールドで起こるのは、楽しいことばかりではない。ビーチでお尻を触った男性にバービーがパンチをお見舞いして、ケンと共に逮捕されたり……。

その後の展開は極秘情報で明かされていないものの、バービーをバービーランドに戻すべく、CEOが追いかけてくるパターンや、リアルワールドでの経験を通し、“大切なこと”を学んだバービーが自発的にバービーランドへ戻り、仲間たちをインスパイアするというパターンも考えられる。

なんとも想像を掻き立てられる展開だが、詳細は公開まで待つとして、まずはバービー役を演じるマーゴット・ロビーとケン役のライアン・ゴズリングについて振り返ってみたい。


バービー役がハマる奇跡の美貌!


Everett Collection/アフロ


2016年にインクルーシブな新バービーが発売されるまで、57年にわたって“非現実的”なプロポーションを美の基準として少女たちに刷り込んできたバービー。マーゴットが演じるのは、まさにそのバービーだ。

にっこり微笑むだけで周囲をパッと明るくする華やかな美貌としなやかな肢体を持つ彼女は、故郷オーストラリアの昼メロで活躍した後でアメリカに渡り、テレビドラマ『PAN NAM/パンナム』(2011〜2012)でハリウッド・デビュー。ヒロインの妹役だったが、時代を先取りする女性という役どころで、女性視聴者の共感を呼ぶことに。

残念ながら番組は1シーズンで終了したが、注目度が上がったマーゴットは、『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(2013)で大ブレイク。レオナルド・ディカプリオ演じる主人公のセクシーで気が強い妻ナオミを演じた。ノーパンで夫を誘惑しつつも、「触ったらダメ」とハイヒールを顔にぐりぐり押しつける場面は、強烈な印象を残した。


レオナルド・ディカプリオ(右)と共演した『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』
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アートハウス作品『フランス組曲』(2014)や『死の谷間』(2015)『アメリカン・レポーター』(2016)などで肩慣らしをし、満を持して出演した大作『ターザン:REBORN』(2016)では、拉致されても自力で戦う現代風のジェーンを熱演。さらに、『スーサイド・スクワッド』(2016)で演じたハーレイ・クイン役で再び大ブレイクを果たした。


『スーサイド・スクワッド』
Everett Collection/アフロ


サイコな極悪人ではあるものの、奇妙にチャーミングでどこか憎めない“バッドアス”なハーレイ・クインは、彼女の当たり役に。撮影中にマーゴット自身が続編『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Pray』(2020)を企画し、映画会社ワーナー・ブラザーズと契約。プロデューサーも務めたこのアクション快作は、監督も脚本家も主要キャストも女性というウーマン・パワーが爆発した、時代に合った作品に仕上がっている。

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017)の演技を高く評価され、アカデミー賞とBAFTA(英国アカデミー)賞、俳優組合協会賞、ゴールデン・グローブ賞などで主演女優賞にノミネートされ、演技派の仲間入りも果たした。


『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』
Backgrid UK/アフロ


老けメイクでエリザベス1世を演じた『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(2018)や、悲劇的な最期を遂げた女優シャロン・テートに息を吹き込んだ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)、FOXニュースで起きたセクハラ事件を描いた『スキャンダル』(2019)など、3年連続で主要な映画賞の候補となった彼女の立場は、もはや盤石だろう。

作家性の強いデヴィッド・O・ラッセル監督の群像劇『アムステルダム』(2022)とデイミアン・チャゼル監督の『バビロン』(2022)はネガティブな評価も多かったが、マーゴットの演技だけは賞賛されている。

夫や友人と設立した製作会社でプロデユーサーとして活躍し、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)なども製作する彼女は現在、ハリウッドでもっとも勢いがある映画人でもある。そんな彼女がどんなバービーを演じてくれるのか、世界中が興味津々だ。


カリスマティックな俳優がケンを演じる意外性


Capital Pictures/amanaimages


そして、バービーといえばボーイフレンドのケンだ。バービーを販売するマテル社によると、ティーン・モデルであるバービーとCM撮影で出会い、交際するようになった設定だという。最初の職業はモデルだが、やがて宇宙飛行士やゴルファー、バスケットボール選手、歯科医師や映画監督などさまざまなキャリアを持つケンが登場し、時代に応じたバージョンが発売されている。

映画でケンを演じ、人形以上に非現実的(?)な筋肉美を披露しているのがライアン・ゴスリングだ。シリアスな人間ドラマからSF大作、コメディ、アクション、ミュージカル、アートハウス作品と何でもござれ。

役作りにも定評があり、デレク・シアンフランスやニコラス・ウィンディング・レフン、テレンス・マリックといった芸術肌の監督からのオファーが絶えない。そんなカリスマティックなゴスリングがケン役とはちょっと意外に思う人もいるかもしれない。


『完全犯罪クラブ』
Photofest/アフロ


子役からキャリアをスタートさせた彼は、エンタメ色の濃いファミリー向け番組などでキャリアを積み、19歳からは映画に軸足を移すことを決意。映画出演2作目の『The Believer』(2011)の繊細な演技によって業界内での高い評価を獲得。続いて出演した『完全犯罪クラブ』(2002)では、主演のサンドラ・ブロックとの交際に注目が集まった。

若手演技派として認められ始めたゴスリングは、『きみに読む物語』(2004)で世界的に大ブレイク。アイドル的な人気を獲得したが、演技の幅を広げ続けた彼は、『ハーフネルソン』(2006)で初のアカデミー賞主演男優賞候補となっている。しかし、名実ともにAリストスターになった後もアートハウス作品志向の強さは変わらず。ラブドールをパートナーにする恋愛下手の男を好演した『ラースと、その彼女』(2007)に続く、『ブルー・バレンタイン』(2010)では妻役ミシェル・ウィリアムズとの演技合戦で観客を魅了している。


『ラースと、その彼女』
Everett Collection/アフロ


その後、商業的に成功しない作品が続き、スランプに陥って休業した時期もあったが、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(2015)で新たな魅力を発揮し、ミュージカル『ラ・ラ・ランド』(2016)で完全復活。2度目のアカデミー賞候補となり、デイミアン・チャゼル監督とは『ファースト・マン』(2018)でも再び組んでいる。


『ラ・ラ・ランド』
Photofest/アフロ


コロナ禍を経て、ベストセラー小説を映画化した『グレイマン』(2022)で4年ぶりにスクリーン復帰したゴスリングは、プロモーションで出演したジミー・ファロン司会のトーク番組で『バービー』出演の経緯を説明。

グレタ・ガーウィグ監督から出演依頼の電話を受けた後、どうしよかと考えながら裏庭に出たら、そこにうつ伏せのまま放置されたケン人形とレモンの皮が落ちているのを発見。トーク番組向けの冗談だったのかもしれないが、これを啓示と思って出演を承諾したという。

トレイラーを見る限りは、完璧なボディを持つバービーのボーイフレンドにふさわしい筋肉美と輝くブロンドヘア、そしてチャーミングすぎるウィンクという表面的な魅力は十分。

「誰もケン人形では遊ばない。バービーの添え物。ケンは家も仕事もない」と分析する彼は、果たしてケンをどう演じているのか。
キャラクターの細部まで役を作り込むことで有名なゴズリングのこと。物語の進行と共に、ケンの内面の複雑さも表現されることを期待したい。




文/山縣みどり


『バービー』(2023)Barbie アメリカ


©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

完璧でハッピーな毎日が続く夢のようなバービーランドで暮らすバービー(マーゴット・ロビー)とケン(ライアン・ゴズリング)が、ある日、完璧とはほと遠いリアルワールド(人間世界)に迷いこみ、本当に大切なものを見つけるファンタジー。メガホンを取るのは、『レディ・バード』(2017)や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)のグレタ・ガーウィグ監督。

8月11日(金)より全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト: barbie-movie.jp
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.