便利だと思って着まわしていたアイテムがしっくりこないという経験はきっと誰にもあるはず。ファッション浦島太郎にならないための意識改革方法とは? 人気スタイリスト・地曳いく子氏がOver60のおしゃれ論を綴った『60歳は人生の衣替え』より一部を抜粋、編集してお届けする。
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かつての鉄板アイテム、白Tにさよならを
昔は、必ずマストアイテムに入っていた白いTシャツ。20年ほど前、働く女性向けの女性誌のスタイリストをしていたときには、何度も何度もTシャツの特集ページを担当したものです。

私自身、白Tが大好きで何枚も持っていたお助けアイテムでした。ところが!突然似合わなくなったのです。あんなに好きな鉄板アイテムだったのに。
似合わなくなったどころか、一枚では人目にとても晒せない見苦しい姿に。特に危険なのが半袖の白Tシャツです。ジャケットのインナーとしてならまだいけるのですが、暑くてジャケットを脱いだときが悲惨(黒やネイビーのTシャツはまだセーフなのですが)。
そろそろ白い半袖 Tシャツはあきらめて、代わりに白いノーカラーブラウスを着るようにしなくては、と考え中です。
シンプルなシャツもかつてはマストアイテムといわれていましたが、似合うシャツがなかなかない、ピンとこないと思ったら、着なくてOK 。今、スマホの見すぎで前傾姿勢の人が増えていますが、前傾姿勢から巻き肩になってしまうとシャツが似合わなくなりますし、お手入れの面倒さとも相まって、今やシャツは、嗜好品的存在となったのです。
時代もシャツよりブラウスになってきた気がします。私自身長年ブラウスが苦手分野だったのですが、大人でもいい感じに着られる適度にふわふわしたロマンティックブラウスも出てきています。
ブラウスを選ぶ際、胸のタイプ別に気をつけたいポイントがあります。上品な胸の方はフリル盛り放題もアリですが、私のようにゴージャスなボリュームの胸の場合は、キリッとしたスタンドカラーやボウタイなどのブラウスを選ぶときれいに着こなせます。
かつての鉄板アイテムとのお別れは本当につらいし寂しいもの。でも、「さよなら、白いTシャツ、今までありがとう。私はもう着られないけれど、誰かほかの人に愛されてね」(恋人との別れ?〈笑〉)と感謝してさよならを告げましょう。
バッグの詰め込みすぎには注意しましょう
スマホの進化で変わったことのひとつに、荷物の量があります。今や、手帳や音楽を聴くためのミュージックプレイヤー、ショップカードまですべてスマホに入ってしまいました。
こんな時代なのに、「これからプチ家出?または推し追っかけ遠征?」と思うくらい、パンパンに荷物を詰め込んだ大きなバッグを持っている人をたまに見かけます。
私もまだ時々やってしまうのですが、大きなバッグがパンパン状態のときは大概、自分に自信がなく判断力に欠けている、心身ともに疲れているときです。
判断能力がなくて不安だから、「もしかして」と思ったものは全部入れてしまう。気がつくと、老眼鏡 2本、ハンカチ2枚と、同じアイテムが重複して入っていることもあります。そうやって、いらないものでいっぱいのバッグを持ち歩いた日は、家に帰る頃には疲れきっています。
「これがないと不安」という気持ちもよくわかりますが、実際、何か忘れものをして不便を感じることがあったとしても、たかだか一日数時間の不便。命に関わる薬や家の伴以外は、それがなくても何とか過ごせるはずです。
「ないと困るかも」と取り越し苦労で重い荷物を持ち歩くよりは、荷物を軽くして、健康とおしゃれに気を遣いませんか?海外セレブがファッションスナップで持っているビッグバッグ、あの中身はほとんど空なんです!
つい、バッグにたくさん物を詰め込んでしまう方へ、「バッグ軽量化リハビリ法」をお伝えしましょう。
毎日帰宅したら、とりあえず、バッグの中身を全部テーブルの上に出してみる。そして、その日に使ったものと使わなかったものとに分類してみるのです。実際に使ったものは案外少ないはず。それを1週間くらいやってみてください。使わないで一日じゅう持って歩いていたものの多さにびっくりしますよ。
旅行もそうです。今は、どんな場所にもコンビニがあります(とんでもない山奥や離島など以外は)。たとえ旅行中に歯ブラシやコンタクト液を忘れても、すぐに手に入りますし、無人島に探検に行くわけではありません。
先日見たYouTubeの「ミニマリストラボ」の方も、「お片づけは、まずバッグの中身から」と言っていました。

バッグの重さは人生の重さ、自分の心の重さ、かもしれません。
ちなみに、今シーズン、 私がヘビロテしているのは、リサイクルされたペットボトルから作られたアニヤ・ハインドマーチのトートバッグと、宝島社のムック本企画で作らせていただいた軽い素材のグレートートバッグ「オールシーズン・トート」です。
文/地曳いく子 写真/shutterstock
60歳は人生の衣替え
地曳 いく子
1540円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4-08-781739-3
全ての中高年女性たちへのメッセージ『50歳、おしゃれ元年。』から10年。自身も還暦を越えた、人気スタイリストが語りつくす、Over60のおしゃれ論!
「季節が移り変わるように、人生も夏から秋、秋から冬と移り変わっていくのではないでしょうか。季節の移り変わりに逆らうことはできないように、いくら嘆いてみても人生の季節に逆らうことはできません。──中略──
季節が変わったら何をすればよいのでしょう? それは、衣替えです」(はじめにより)
【目次より】
第1章
「今」を生きるおしゃれをしよう
人生の衣替え4カ条
今こそクロゼット総点検。さよならすべき服はこれ!
第2章
昭和のおしゃれルールが抜けきらない人への処方箋
「盛る」よりも「抜く」のが令和流
かつての鉄板アイテム、白いTシャツとシャツにさよならを
バッグの詰め込みすぎには注意しましょう
第3章
おしゃれ心がダダ下がってしまった人への処方箋
ベーシックアイテムこそアップデートする
ワンシーズンに一つだけ、トレンド・リハビリアイテムを投入
Over60の出直しアイテム「進化系ジャケット」
第4章
Over60のおしゃれとお金を考える
おしゃれに使っていた財力は別のところに
「あったら便利」はなくていい
まとめ買い・2色買いも卒業しました
第5章
Over60の、持続可能な簡単おしゃれテクニック
パッと着っぱなしはご法度! ひと手間で見違えます
店員さんの「大丈夫!」は大丈夫ではありません
試着の鉄則「デニムに合いますよ」には要注意
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