NHKの連続テレビ小説『半分、青い。』(2018)で共演して以来、プライベートでも仲良しだという永野芽郁と奈緒が、映画『マイ・ブロークン・マリコ』(9月30日公開)で再共演。主人公・シイノ(永野芽郁)の親友役で、自ら命を絶った“壊れたマリコ”を演じた奈緒に、映画の舞台裏と、なくてはならない大切なものについて聞いた。

たくさんの人に届けないといけない



――『マイ・ブロークン・マリコ』(2022)は、親友の遺骨を遺族から奪って一緒に旅に出るという衝撃的なストーリーを描いた同名漫画の映画化です。出演が決まったときの感想を教えてください。

タナダユキ監督の作品はもともと見ていて、いつかご一緒したいと思っていたので、純粋に嬉しかったですね。タナダさんの描く女の子って、可愛いだけじゃない、人間くさいところを大切にしているように思うんです。愛を持って作品を描いていらっしゃる方だと思ったので、「タナダ監督の描く世界に入りたい」という気持ちをすごく持っていました。今回、それが叶ったっていうこともありましたし、原作を読んで大号泣した『マイ・ブロークン・マリコ』を、タナダさんがどう描くのか、ワクワクしました。そして、絶対またいつか共演したいと思っていた永野芽郁ちゃんが、この作品に座長として立ってくれるということで、「こんなに大きな船はない!」と、すごく幸せな気持ちでしたね。

原作を読んだときは、たくさんの人に届けないといけない作品だと強く感じました。大切な人の死に向き合うことは、私自身、生きている中での試練だと感じていて、その経験をせずに生き続けることは難しいと思うんです。シイちゃん(シイノ)が、マリコの死という試練を突然突きつけられて、乗り越えていくまでの姿を見せてもらえたことに、私自身、とても救われたんです。なので、映像化することで、原作も含めてより多くの方に届けたいと思いました。


『マイ・ブロークン・マリコ』で、自ら命を絶ってしまうマリコを演じた奈緒さん
©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会


――マリコ役を演じるにあたり、役作りで気をつけたことや工夫したことは?

私は今までも、過去に何か苦しい経験を持っている役を演じることが多かったんです。マリコもそういう役だったので、役と向き合うときに、悲しいだけの人生ではないってことを、すごく大事にしたいなと思いました。マリコは自ら命を絶つ選択をしますが、その結論に向かって演じることはやめようという思いが強くて。マリコ自身、ときには悲しいこともあったけれど、ときにはうれしいこともあったわけで。シイちゃんが隣にいたことが希望だったという、キラリと光る部分を見つけて演じました。


シイノを演じた永野芽郁(右)と
©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会


――タナダ監督に役作りについて相談はされたんですか?

初めてお会いしたときに、原作についてお互いの思いを共有する中で「同じ方向を見てる!」という感覚があったんです。友情という、ひとつの単語だけで表せないシイちゃんとマリコの関係に強く惹かれているという部分が、監督とは共通していました。監督は、“この役をあなたがやっていいんだ”と俳優に思わせてくださる方なので、私も不安なところは絶対に監督が助けてくれるはずという気持ちで演じることができましたし、シーンごとにOKが出るのも早かったです。


本当に手放せないものは何かを模索中


シイノは、マリコの両親から遺骨を奪取して旅に出る
©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会


――作中で、シイノはマリコの遺骨と一緒に旅をしますが、大切な人を失った側に対する思いや共感する部分はありましたか?

私も身近な人を亡くしているので、もう話すことができないと思う悲しみは共感できました。でも、その人が心の中に生き続けていれば、話しかけちゃうことは今でもあるなと思います。きっとシイちゃんの中でも、マリコは生き続けると思うんです。ふとした時に「マリコ、あんただったらどうする?」「あんたはこうしそうだね」って話しかけてしまうこともある。自分の中に大切な人を存在させて生きていくことに、すごく共感しました。

――マリコを演じ終えたときに、率直に感じたことを教えてください。

この先、マリコと向き合う時間がこれで終わるのかって思ったときに、ポッカリと心に穴が開いたように、寂しく感じました。芽郁ちゃんともっとお芝居していたいとか、いろんな気持ちがクランクアップ直後に沸きましたね。その後、作品が完成して形になったものを見たときに、私たちがすごく大事にしたかったことが、ちゃんとこの映像の中に生きていると感じられたので、安堵感もありました。一緒に作ったすべての人たちへの感謝の気持ちが沸きあがって、原作を読んだときとはまた違う涙を流してました。



――永野芽郁さんとは大の仲良しと聞いています。“親友”以外の呼び方をするなら、どういう関係性の呼び名になりますか?

私も考えたことがあるんですけど…… “芽郁ちゃん”なんですよね。作品中でもシイちゃんとマリコの関係って、親友といえば親友なのかもしれないけど、一言で表わしにくくて。もし表わすとしても、“マリコ”と“シイちゃん”でしかないと思うんです。お互いの存在が、ほかの言葉で替えがきかない関係性なのかなって。それで芽郁ちゃんの存在を改めて考えると、私もなかなか言葉にするのは難しくて、私の乏しい言語力では、“芽郁ちゃん”という一言でしか今は表せないですね。


――最後に、シイノにとってマリコのように、奈緒さん自身の“なくてはならない存在”を、人と物、それぞれ教えてもらいたいです。

まず、家族ですね。マリコを演じてみて、家族の影響は大きいと感じたし、私もひとりでは生きていけないって感じたんです。家族だからこそぶつかることもあったり、面倒くさいと思うこともあったりするけど、楽しいだけじゃなく、もっと深い関係性でいられるのは、家族だから。もし家族がいなかったら……ってことは考えたくない。今後もし今の私の家族とお別れする日が来たとしても、新しい家族が増えていたらいいなとすごく思います。

物については、あまりないかもしれません。実は今、物を手放しまくりなんです(笑)。自分が本当に大事な物はなんだろうと最近すごく考えるようになりました。ひとつずついらない物を捨てることで、本当に手放せないものは何かを探っているところです。










取材・文/宮平なつき 撮影/小田原リエ ヘアメイク/竹下あゆみ スタイリスト/岡本純子


『マイ・ブロークン・マリコ』(2022年)上映時間:1時間25分/日本



2020年に発表され、第24回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞をはじめ、各賞を総なめにした話題の漫画『マイ・ブロークン・マリコ』(著:平庫ワカ)を実写映画化。ストーリーは、ブラック企業勤めのシイノトモヨ(永野芽郁)が見た、親友のイカガワマリコ(奈緒)がマンションから転落死したというニュースから始まる。彼女の死を受け入れられないシイノだったが、マリコの遺骨が毒親の手に渡ったと知り、包丁を片手に“敵地”へと乗り込み、奪取。幼い頃から父親や恋人に暴力を振るわれ、人生を奪われ続けた親友に自分ができることはないのか……。シイノがたどり着いた答えは、学生時代にマリコが行きたがっていた海へ、彼女の遺骨を連れていくことだった。

9月30日(金)より全国公開
配給/ハピネットファントム・スタジオ、KADOKAWA
公式サイト
https://happinet-phantom.com/mariko/

©2022映画『マイ・ブロークン・マリコ』製作委員会


奈緒 なお
1995年2月10日生まれ、福岡県出身。20歳で上京し、2018年連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)で永野芽郁演じるヒロインの親友役に抜擢。19年には、テレビドラマ『あなたの番です』(NTV)に出演し、注目を集める。同年、『ハルカの陶』(末次成人監督)で映画初主演。その後も映画、テレビ問わず、次々と話題作に出演。2022年は、『余命10年』(藤井道人監督)、『TANG タング』(三木孝浩監督)などに出演。10月にスタート予定のドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)では主演を務める。