今まで幾度となく映画やTVドラマになってきたダイアナ元皇太子妃のドラマティックな生涯。19歳で英王室に嫁いだはにかみ屋のプリンセスが、自らの不倫をBBCのカメラ目線で「イエス」と答える女性へと変貌した。ダイアナとはどういう人物で、どう生きたのか。彼女の苦痛に満ちた結婚生活の16年間に、ドキュメンタリー映像で迫る作品を紹介する。


カーチェイスの末にパリの高速道路で事故死


36歳という若さで、突然この世を去ったダイアナ。彼女を追うパパラッチとのカーチェイスの末に、パリの高速道路での事故死だった。全世界から常に注目を浴びた悲劇のプリンセスの生の映像を観ていて思うのは、王室という閉ざされた世界の内側で起きた、ドロドロとしたスキャンダラスな背景と、ダイアナ本人のファッショナブルで絵になる外見の映像が、人々の俗な興味の餌食になったということだ。


作りもののドラマの上を行く、この王室のリアリティドラマは、登場人物がまた濃いキャラクター揃いだった。頂点に君臨したエリザベス女王。ダイアナとは政略結婚だったと認めた夫のチャールズ皇太子。そのチャールズと不貞の関係を続けていたカミラ夫人。ダイアナがすべての愛を注いだ2人の王子。ダイアナと共に自動車事故で亡くなった大富豪のドディ・アルファイド。


次から次とスキャンダルのネタが尽きることはなく、ダイアナは常にパパラッチに追われていた。だが作中、大きな望遠レンズをつけたカメラを持つパパラッチたちが「ダイアナは撮って欲しいときには協力的だが、次の日には顔を隠してしまうんだ。まるでゲームのようにね」と語ったように、ある場面では、ダイアナも報道される自分の映像を解って利用したこともあっただろう。



チャールズを見返したリベンジドレス


それはチャールズがカミラ夫人との不倫関係を認めたテレビ番組が放送された日のことだった。ダイアナは露出部分が多すぎるという理由で数年間、着用していなかった黒のドレスを着てパーティに出席したのだ。そのドレスを着こなしたダイアナの自信に満ちた美しさは、世界中に配信されて賞賛され、不倫を告白したチャールズの話題を吹き飛ばした。その黒いドレスは、チャールズを見返すためのドレスとして、「リベンジドレス」と命名されるほど有名になったのである。


それにしても、ダイアナがチャールズと別居してから、2人の王子のためにも、そして自分自身の新たなる人生のためにも強くあろうとする意志が、ドレスやヘアスタイルにも表れているのがよく分かる。


婚約発表当時の彼女は、ノーランズのようなアイドル系のボブヘアで、初々しく恥ずかしそうな表情を見せていた。「良妻賢母になりたい」。彼女のそんな望みを打ち砕くチャールズの裏切り行為や、古い王室のしきたりに苦しみ、自殺未遂と自傷行為に走ったダイアナ。彼女が過食症で嘔吐を繰り返した過去は有名だが、次男ハリー王子を出産した後の、あまりにもやつれた姿は実情を知ると哀れを誘う。まるでライオンのたてがみのようにボリュームを持たせたヘアは、肉の削げた彼女の顔をさらに細く見せたものだ。


だがしかし、ダイアナはチャールズと離婚という決着をつけて、自分を活かす道筋をつけようとしていた。王室を離れて、慈善活動に力を注いだのだ。ときにはヴェルサーチやシャネルなどのブランド服を素敵に着こなしたが、彼女が熱心に取り組んだ地雷除去の作業を行うときには、飾り気のないカジュアルな服装をして現地に向かった。ダイアナには、明らかに自分の意志で切り拓く新しい人生が待ち構えていたはずだ。このドキュメンタリー映画に続き、先日のエリザベス女王の葬儀におけるヘンリー王子夫妻を観ていたら、繰り返す歴史というものを考えずにはいられない。


『プリンセス・ダイアナ』(2022)The Princess 上映時間:1時間49分/イギリス
監督:エド・パーキンズ
9/30よりTOHOシネマズシャンテほかにて公開/STAR CHANNEL MOVIES
https://diana-movie.com/#


イラスト・文/石川三千花