品川の「グランド・セントラル・オイスター・バー」のカキフライは、日本風とNY風のどちらも楽しめます
品川の「グランド・セントラル・オイスター・バー」のカキフライは、日本風とNY風のどちらも楽しめます
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、市川紗椰が偏愛する「カキフライ」について語る。

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だんだんと寒さが増し、冬の到来を感じる今日この頃。街のざわつきに、ワクワクと同時に切なさが湧いてくる中、今年も見つけました。気持ちも暗くなりがちなこの季節に輝きを添えてくれるあの文字。「カキフライ始まりました」

以前、カキフライの魅力はその希少性にあると力説する人に会いました。「冬の風物詩としてのレア感があるからこそ、こんなにも求められる。カキフライがもし、メンチカツみたいに一年中どこでも頼めたとしたら、果たして同じくらい愛するか」と。

しかし、私は季節限定というげたがなくてもカキフライを偏愛する。ひと口目の、サクサクな衣と、トロリと濃厚な内側の身に歯がめり込む瞬間のハーモニー。口に広がる濃いうまみ。生ガキも大好きだけど、衣をつけて揚げたときのカキの味わいの変貌はすごい。揚げるだけでこんなにもイメチェンする食材はほかにあるだろうか。「あゝカキフライは今、何しているんだろ〜」。季節性の特別感もあるけど、私は一年中カキフライのことを思っている。

とはいえ、カキフライによく使われる品種・真ガキの旬は産卵前の冬。一年中おいしいけど、冬にはさらにおいしいカキフライが食べられるのは確か。真ガキがシーズンに入った頃の11月21日は、「カキフライの日」と定められているそうです。「2=フ」と「1=ライ」にかけているとのこと。なぜ「1」が「ライ」なのか、よくわかりません。

さて先日、真ガキではなく天然岩ガキのカキフライをいただきました。東京・代々木八幡の割烹(かっぽう)「MUGE」の季節の料理の一覧で発見したとき、「そんな贅沢(ぜいたく)ありなの!?」と思わず声を出してしまいました。カキのエキスがぎゅぎゅっと詰まっていて、ひと口かじっても、不思議と汁が流れ出しませんでした。その代わり、噛めば噛むほどうまみがあふれてきました。

カキそのものはもちろん、衣もポイントですよね。かつて日比谷にあった「レバンテ」のカキフライの衣は薄く、繊細でした。カキは三重県産ふわトロ系。厚い衣より、細かくて薄いほうがミルキーさがダイレクトに感じやすい気がします。

鶯谷(うぐいすだに)の洋食の名店「香味屋(かみや)」も薄くてさっくり。しっかり火が通っている"よく焼きタイプ"だけど、カキがとにかく肉厚です。細かい衣からの、ぎっしり詰まっているアスリートの肉体のような身。同じく繊細な衣は神田小川町(12月上旬に三鷹へ移転)の「七條」。三陸産のカキは大粒で濃厚。あえて水洗いしてないそうで、海の風味が生かされています。

とんかつ屋さんのカキフライも忘れちゃだめですね。傾向としては、厚めのガリガリ系の衣が多い気がします。そんな中、秋葉原の「丸五」は明るい色の衣で、粗いけど軽い。大粒のカキでブリンブリンでジューシー。神田「ポンチ軒」もとんかつ屋さんらしい粗めのパン粉だけど、不思議とふんわりした衣です。カキは濃厚で飲める。とんかつ屋さんのカキフライは揚げ具合へのこだわりが印象的です。

ほかにも、小ぶりなカキが何個か入っている"爆弾系"カキフライやカキフライ専門店も増えています。みんなでカキフライシーズンを満喫しましょう!

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。揚げ物をいつでも好きなだけ食べられるのが健康の証し。公式Instagram【@sayaichikawa.official】