昨年は1軍で96試合に起用されるも、打率2割に届かなかった日本ハムの清宮。同じファーストの中田翔が不調で2軍落ちしたが、昇格はあるのか
昨年は1軍で96試合に起用されるも、打率2割に届かなかった日本ハムの清宮。同じファーストの中田翔が不調で2軍落ちしたが、昇格はあるのか

2017年のドラフト会議は、「未曽有のスラッガー大豊作年」といわれた。将来有望な高校生スラッガーが続々とプロへと進んだのだ。そのなかには、今や球界を代表する若き大砲もいる。

ヤクルトの4番打者・村上宗隆(むらかみ・むねたか)はプロ2年目の2019年に36本塁打を放ってブレイク。その後も年々進化を遂げ、今や21歳とは思えない風格をまとい、一流打者の仲間入りを果たしている。

華々しくスターの座へと上り詰めた村上とは対照的に、ドラフト時に目玉格とされた選手の多くはいまだに硬い殻を破れずにいる。

そもそもこの世代は"清宮世代"と呼ばれていた。清宮幸太郎(日本ハム)が世代のトップランナーとして独走状態にあったのだ。ラグビー界の名将・克幸氏を父に持ち、リトルリーグ世界一に輝いたジュニア期から注目を浴びてきた。

早稲田実業高に入学して初めて公式戦でヒットを打っただけで、スポーツ新聞の1面を飾る。そんな選手は前代未聞だった。

高校通算111本塁打、高校生最多タイとなる7球団からのドラフト1位指名。ただ、そんな怪童もプロではくすぶり続けている。1年目から3年連続で7本塁打。勝負の年と意気込んで迎えた4年目の今季は、オープン戦から結果を残せず開幕を2軍で迎えた。

日本ハムは、4月末に1軍で新型コロナウイルスの集団感染が起きた関係で、2軍から1軍に昇格する選手も多かった。そんなチームの危機にあっても、清宮の名前が呼ばれなかったところに状況の悪さが透けて見える。

清宮の打撃練習を見ていると、「なぜこの打者がレギュラーになれないのか?」と不思議に思えてくる。雄大なスイングから次々とスタンドインする打球は壮観だ。

だが、今の清宮は持ち前のうまさがネックになっているのかもしれない。結果を欲しがるあまり、投球に対してフルスイングできない。中途半端に当てにいってのファウルフライなど内容の悪さが目立ち、これまで辛抱強く起用し続けてきた栗山英樹監督からは「試合中に打ち方が変わってしまう」と厳しい指摘を受けている。今季、新人ながら「三振かホームランか」とフルスイングする佐藤輝明(さとう・てるあき/阪神)とは対照的だ。

今季の2軍での成績は、29試合に出場して打率.243、3本塁打、18打点(成績はすべて5月17日現在)と低空飛行が続く。三振数は26とスラッガーの割に少ないが、この少なさが逆に清宮の問題点を浮き彫りにしているのかもしれない。

履正社高時代に「東の清宮、西の安田」と並び称された安田尚憲(やすだ・ひさのり/ロッテ)も、もう一歩突き抜けられない状況が続いている。

昨季は井口資仁(いぐち・ただひと)監督に抜擢(ばってき)され、4番打者として87試合に出場。それでも、打率.221、6本塁打と内容は物足りず、「先行投資」の色合いが濃かった。その投資を回収したい今季だが、打点数はリーグトップの32と勝負強さを発揮しているものの、打率.228、6本塁打とブレイクしたとは言い難い。

高校時代から「打球に角度がないから、スラッガーではないかもしれない」という見方を示すスカウトもいた。また、スラッガーの育成は環境にも左右される。

岡本和真(巨人)や鈴木誠也(広島)を育成した名打撃コーチの内田順三氏は「チーム内の主軸を見て、若い強打者が育っていく」と持論を語る。西武やソフトバンクのような強打者が育つ土壌とは異なり、ロッテには伝統的に高卒の素材型スラッガーを育成する実績や文化はなかった。

それでも今年は松中信彦氏を臨時コーチに招き、安田のほかにも山口航輝(やまぐち・こうき)など高卒スラッガーを育成しようとする球団の強い意志が感じられる。安田が爆発的な打棒を発揮できれば、ロッテに新たな土壌が生まれることになる。

17年夏の甲子園の主役といえば、6本塁打の大会新記録を樹立した中村奨成(なかむら・しょうせい/広島)だった。強肩強打の捕手としてドラフト会議では2球団から1位指名を受けた。

ところが、プロ入り後は故障もあって思うような成績を挙げられずにいる。

今季は出場機会を増やすために、本職の捕手だけでなく三塁手や外野手としてもプレー。4月16日には「2番・レフト」で先発出場し、プロ初安打も放っている。

広島の苑田聡彦(そのだ・としひこ)スカウト統括部長は、中村のプロ入り前から「華のある選手だから、長嶋茂雄さんのようなサードになるイメージもある」と語っている。捕手にこだわらず、豊かな潜在能力を生かせる場所を見つけられるか。

次に、期待のスラッガーを紹介しておきたい。パワーにかけては同期ナンバーワンと思われるリチャード(ソフトバンク)だ。元アメリカ海兵隊員の父を持ち、ツボにはまった際の飛距離は沖縄尚学高時代から評価されていた。

育成ドラフト3位での入団ながら、20年に支配下登録されると、2軍で本塁打と打点の2冠王に輝く。育成選手が続々とスターに出世する「育成のソフトバンク」の新たな旗頭になるかもしれない。

最後にこれだけは強調しておきたい。清宮、安田、中村の3人は「伸び悩んでいる」といってもまだ高卒4年目にすぎない。村上が出世しただけに明暗が分かれたように見えるが、大学4年生の年齢で結果を求めるのは酷だ。

長い野球人生で誰が最終的な勝者になるかは、まだわからない。スラッガー大豊作年同期組のつばぜり合いは、これから激しさを増すはずだ。

取材・文/菊地高弘 写真/共同通信社