疲れを知らないまま突き進むと、限界まで自分を追い詰め、大きなダメージを受けてしまうかもしれない。
一方、やや怠け者で物事を早めに諦めて引き返す点を見極められる人の方が、穏やかな人生を無理なく生きることができる。
そう述べるのは、作家の曽野綾子氏だ。

『人生の疲れについて』(扶桑社刊)は90歳になった今も現役作家の曽野氏が、人生のさまざまな疲れについて、老いとの向き合い方についてつづった一冊である。

■人生は欠け茶碗

健康、能力、性格など、何かしらに問題を持たない人はいない。だから、曽野氏は誰の人生も欠け茶碗だと思っていると述べる。
茶碗には、よく見ると大きなヒビが入っていたりする。長年使っているのでご飯の糊で補強されているのか、辛うじて割れない茶碗。欠け茶碗は荒々しく扱えない。丁寧に扱えば、何とか命長らえることのできる代物だ。
人も品物も同じ。使い方を知れば、最後まで生きる。この配慮ができる能力を人間の「うまみ」と曽野氏。うまみのある柔らかな人間になることが、終の目的だと述べるのだ。

■手抜き、ずる、怠けのすすめ

高齢になると、年々できないことが増えることを悲しんで、退屈してしまうこともあるという。
しかし、時間の変化は人に日々新しい問題をつきつけてくれる。それに対して、都度対処していけば、歳をとることに対して一方的な負け戦にならなくて済む。そのために曽野氏は手抜き、ずる、怠けをすすめている。手抜きだからこそ続くこともあり、ずるいから追い詰められもせず、怠けの精神が強いからこそ新しい機械やシステムの開発につながる。
曽野氏は、どうしたら手抜きをしながら目的を達せられるか、ということに情熱を燃やし、家中を整理して新しい生活体勢をつくったという。

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老後をどう過ごすか。歳を重ねていけば誰もが経験する老いとの向き合い方で前向きな日々を過ごせる。
曽野氏の言葉の数々から生き方のヒントを得られるはずだ。

(T・N/新刊JP編集部)