強くなる、強くなると言われても、なかなか強くならない中国サッカー。むしろ弱くなった感じさえする。カタール・ワールドカップ・アジア最終予選、ホームで行なわれた中国戦は2-0で日本が勝利した。

【PHOTO】W杯アジア最終予選の中国&サウジ戦に臨む日本代表招集メンバー23名!
 日本のスタメンは予想通り。システムも4-3-3。怪我や出場停止を除けば、今回も不動のメンバーを送り出した。代わり映えはしないが、同じメンバーだけに、相手を見て戦う余裕はあったのではないか。

 中国は4-4-2を敷くが、個々が相手に釣られてスペースを空けがち。DFもその傾向が強く、左センターバック(CB)の20番チュー・チェンチエは、すき間に立ち位置を取ろうとする大迫勇也を激しく迎撃し、ファウルを取られる場面もあった。日本はアジアの対戦国から、「球際のバトルを嫌がる」と認識されている。おそらく中国も立ち上がりから激しい当たりをぶちかまし、日本の嫌がる展開に持ち込もうとしたのではないか。

 しかし、酒井宏樹と伊東純也の右サイドコンビは、相手を冷静に見ていた。

 開始5分、スローインの場面。伊東が相手サイドバック(SB)の2番チュン・チュンの裏へ飛び出すと、酒井は素早くボールをスペースへ投げた。左センターバックの20番チュー・チェンチエは、大迫のマークに出てスペースを空けており、カバーが利かない。飛び出した伊東はフリーで、ゴール脇からシュートを見舞った。

 このスペース、中国の左SBと左CBの間は、日本の攻撃ターゲットになった。そして前半11分、日本はこのエリアから先制点を得ることになる。

 中盤で守田英正、遠藤航を経由したボールを酒井へ。左SBチュン・チュンが出てきた、その裏のスペースへ、再び伊東が飛び出す。中国は深い位置の守備なのでSHの8番ハオ・ジュンミンも帰陣していたが、サイドハーフとSBが2人ともに酒井へ寄せてしまい、その裏がすっかり空いていた。

 ボランチの4番ワン・シェンチャオが遅れてカバーに走るが間に合わず、スライディングで飛び込むと、伊東のクロスが腕に当たり、日本がPKを得る。これを大迫が決めて、1-0。試合の緊張感は無くなり、安心感が漂った。
 
 その後もCBとSBの間を狙い続けた日本は、伊東以外にも守田や田中碧など、複数の選手が入れ代わり立ち代わり、CBとSB間への飛び出しを窺う。しかし、中国DFが迎撃を控え、背後のスペースの警戒を強めると、あまり効果的では無くなった。逆に、37分、田中から斜めに入れたパスを守田が背後へフリックし、南野が決定機を迎えた場面のように、中盤でワンクッションを入れる攻撃がビッグチャンスにつながるようになった。
 
 背後を狙う攻撃が徐々に効かなくなったのは、中国が警戒し始めたのもあるが、日本側の選手たちも、早いタイミングで入り過ぎた。相手ライン上でパスを待っている間にケアされてしまい、飛び出すスペースを自ら失って停滞した。

 ただその点で、後半は伊東の動き方が変わった。相手ラインに張り付かず、一旦中盤へ、相手ボランチの脇に下りて、立ち位置を取るようになった。スペースを狙う日本の選手がいないので、左CBチュー・チェンチエは再び大迫を潰そうと出て来るが、そのタイミングで伊東が背後へゴー。再びCBとSBの間を狙って飛び出し、ボールが出ずとも、惜しい場面は何度もあった。

 相手を見ながら戦う余裕。それは間違いなくある。とかく固定メンバーを批判されがちな森保ジャパンだが、固定メンバーならではのゲームの駆け引き、安定感があるのは良いところだと思う。

 ただ一方で、大迫や南野拓実が決定機を逃したり、長友佑都の箇所で攻撃が詰まったり、それを中山雄太に代えた途端に有効なクロスで2点目を挙げるなど、固定されたメンバーが個々の質において、説得力のあるパフォーマンスを出せていないのは確かだ。
 
 正直、このパフォーマンスではサウジアラビア戦は厳しい。
 
 森保監督もそれには同意するはずだ。試合後の記者会見ではチームの出来を評価しつつも、「サウジアラビア戦はインテンシティやテンションの部分で高いものになると思う。別次元の覚悟を持って準備しなければいけない」と語った。それを語る際の表情も厳しく、徹してチームの批判や苦言を外部に言わない森保監督のキャラクターにおいては、最大限と言ってもいいアラートだと、個人的には感じた。

 サウジアラビアとしては、日本戦に勝てばW杯出場が決定する状況。

 つまりその場合、我々は埼玉スタジアムで、敗れた相手がW杯出場の歓喜に沸く姿を見届けなければならないということだ。こんな屈辱はない。同じ相手に2度負ける屈辱も酷いが、ホームで歓喜を見せつけられる屈辱はもっと酷い。

 大一番が来た。これから日本代表に吹く風、その風向きを大きく左右しそうな一戦だ。

取材・文●清水英斗(サッカーライター)