第44回皇后杯の決勝が1月28日、大阪のヨドコウ桜スタジアムで行なわれ、日テレ・東京ヴェルディベレーザがINAC神戸レオネッサを4−0で破り、2年ぶり16回目の日本一に輝いた。
【動画】歓喜にわくベレーザの選手たち! 皇后杯で2大会ぶり16回目の戴冠!
 4回戦から登場したベレーザは、マイナビベガルタ仙台レディースとのWEリーグ対決を4−1で制したが、準々決勝の前週に行なわれたリーグ戦では、同じ相手とスコアレスドローに終わった。ゴール前にブロックを敷いた相手に対して、人数をかけて攻略しようと試みたが、相手GKの好セーブもあって、最後までゴールをこじ開けられなかった。

 竹本一彦監督は、準々決勝のサンフレッチェ広島レジーナ戦に向けた1週間で「問題は、簡単に言えば決定力なので、気持ちやコンビネーションを修正しました」と明かす。多少、選手のプレーエリアも変えた。ボールを持つと右サイドの宮川麻都が高くポジションを取って、実質的な3バックを構成し、宮川の前にいた藤野あおばはゴールに近い位置で植木理子、小林里歌子と連係するシーンが増えた。

 スピードとパワーに優れた前線の選手へ、木下桃香から素晴らしいボールが供給される。「先週(仙台L戦)のはゴール前を固めていましたが、今週の広島は、前からボールを取りにきた。そこで剥がして前にボールを送ってカウンターという形で」と木下。低い位置でゲームをデザインしながらボールの出所を潰そうと、出てくる相手を食いつかせるとともに、決定機の起点ともなった。
 
 広島R戦は3−0で完勝。3点のうち、2点は木下のロングパスから。3−1で勝利した準決勝のアルビレックス新潟レディース戦の2点目も、宇津木瑠美からの糸を引くようなフィードから生まれた。

 伝統のパスワークからの崩しに、一発で裏返すロングボールを交えて「どちらもできなければいけない」と指揮官、選手が口を揃えていた攻撃の使い分けが、しっかり機能した。

 今大会、全試合で複数得点を記録した植木は準決勝後、「ベレーザらしいサッカーと言えば、細かくパスをつないでグラウンドを支配していくというイメージなんでしょうけれども、そのなかで自分だったり、(宇津木)瑠美さんだったりが飛び道具として局面を変えることができる。そこが、今のベレーザの強みだと思います」と語った。
 
 そして迎えた決勝では、宮川が植木の先制点を演出する。「攻撃の幅を取ることで自分が高い位置を取っています。守備を固めてくる相手に対してはサイド攻撃が有効だと思うし、そこからのクロスを意識しています」と話していた宮川だが、このシーンでは藤野を使ったワンツーで自らペナルティエリア内に切り込み、大仕事をやってのけた。

 後半には、木下のコーナーキックから岩清水梓が競り、そのこぼれ球を植木がシュート。再び、山下杏也加の守るゴールを破る。

 2点のリードを奪った後は、3点のリードをフイにして、三菱重工浦和レッズレディースにPK戦負けを喫したWEリーグカップ決勝の苦い教訓を、各選手が思い返し、気を引き締めた。

 最終ラインでは、岩清水の右にキャプテンの村松智子、左にI神戸から移籍した西川彩華と、人に強いDF3枚が中央を固め、サイドはマッチアップする相手に合わせて下がり、前半とは逆に5バックのような形に変形。I神戸のキーマンと目していた守屋都弥には、北村菜々美が対応した。

 岩清水は、相手のストロングポイントとするロングボールへの準備をしながらも、気持ちの部分では守るのではなく、前に出ていたという。「(浦和Lに3点のリードを追いつかれた)カップ戦で苦い経験をしていて、守りに入りたいという気持ちが出たらやられると身に染みて感じていたので、気持ちは前に向かっていました。たぶん、みんな同じ気持ちだったと思う」。

 I神戸がゴールへ直線的にアプローチするのではなく、プライドをかけて中央からの攻略を選択したが、ベンチの指示で前線に残った藤野、植木、小林がコースを限定して、きれいなビルドアップを許さない。

 さらにプレスバックで三浦成美、木下が相手の中盤を挟み、自由を奪った。そして、疲労と焦りが生んだ相手のミスに、小林と藤野が抜け目なく加点し、勝負を決した。
 
 ベレーザのタイトル獲得は、WEリーグ開幕前に行なわれた2020年度の皇后杯以来のこと。WEリーグが始まって以降は、昨年度の皇后杯、WEリーグ、そして今季の開幕前に行なわれたWEリーグカップは、すべて逃した。

「自分としても優勝から離れていたし、ここ最近、獲れていないなと思うことも多かった。この優勝の景色も、ウチの若い子たちにはまた違った景色だろうし、リーグ戦の後半戦に向けてもここでタイトルを獲ったことで、きっと良い意味で欲が出てくると思う」(岩清水)

 I神戸、浦和の新タイトルホルダーたちには、リーグ戦を含めて、苦戦が続いていた。チーム事情がベストでなかったにせよ、今季も比類のない勝負強さを見せていたI神戸への完勝がもたらす自信は大きい。

 連綿とつないできた「女王のメンタリティ」を16回目の優勝で再確認したベレーザ。ウインターブレイク中のWEリーグでは暫定4位だが、再開後の反転攻勢のきっかけになりそうだ。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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