Jリーグ30周年の特別企画。歴代ベストイレブンを選ぶならどんな顔触れになるか。そしてMVPは? フリーライターの元川悦子氏にセレクトしてもらった。

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 Jリーグ30年を振り返ると、ストイコビッチやジョルジーニョ、マルキーニョスやレアンドロ・ダミアンなど、MVPを獲得した優れた外国人選手は何人もいる。だが、今回はあえてそういった助っ人を外し、日本人選手だけで歴代ベストイレブンとMVPを選んでみることにした。

 Jリーグ出場実績と、MVPやベストイレブンなどの実績、クラブのタイトルなど活躍度を踏まえると、海外で長くキャリアを過ごした中田英寿や本田圭佑、長友佑都、内田篤人といった面々は自ずと選外になる。国内でプレーした時間の長いプレーヤーが並ぶ形が順当と言える。

 そういった基準で考えると、FWはやはりJ1・191ゴールという最多得点記録の大久保嘉人を抜きには語れない。彼はMVP受賞歴こそないものの、ここ一番の決定力と圧倒的な数字、ヤンチャなキャラクターも含めて記憶に残るプレーヤー。ああいう選手はそうそう出てこないだろう。
 
 MFは人材豊富で迷いに迷ったが、二度のMVPを獲得した中村俊輔、30代後半になっても突き抜けた存在感を誇る家長昭博、J最多出場の43歳の鉄人・遠藤保仁、川崎を強豪クラブに押し上げた中村憲剛、鹿島不動のレジェンド・小笠原満男の5人を選んだ。

 4−2−3−1では彼らを上手く配置できないため、アンカーシステムの4−3−3を採用。それぞれの特長が出て、チームとしても機能するように工夫してみた。

 このうち俊輔はボランチ、右MFでも輝くが、左サイドからの巻いてくるクロスは他の誰にも蹴れない精度と迫力を備えている。トルシエジャパン時代はその役割を本人が嫌がっていたが、あのキックをもう一度、公式戦で見てみたいと思うのは筆者だけだろうか。懐かしい記憶も含めて、彼をMVPに選定し、ポジションも左サイドにした。

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 一方、SBも悩ましいところだが、代表実績のある長友や内田よりも、阿部勇樹と駒野友一のほうがJで長いキャリアを築いている。そこは特筆に値する点。この2人はやはり外せない。

 阿部に関してはボランチの印象が強いが、市原ジュニアユース、ユースの頃からSBとCBをマルチにこなせる人材だったし、右SBに入れても問題ないはず。異論はあるかもしれないが、筆者はそう考え、この位置に据えることにした。

 駒野はご存じの通り、両サイドを柔軟にこなせる選手で、走力と献身性では本当に頭一つ抜けていた。2010年の南アフリカ・ワールドカップのパラグアイ戦ではPKを失敗しているものの、キックの名手だからこそ、岡田武史監督から直々に指名されている。彼のような職人肌の人材はもっと評価されていいはずだ。

 CBも秋田豊、松田直樹、山口智などJを牽引した選手は複数いるが、MVP経験者の中澤佑二と田中マルクス闘莉王はやはり別格だ。
 
 中澤は東京ヴェルディの練習生からトップに上り詰め、闘莉王にしても留学生として来日し、日本国籍を取得してスターダムにのし上がった選手。エリートではない道のりも含め、最大級の敬意を払うべきだ。

 最近はJ2からJ1への個人昇格や、Jクラブから大学を経由して大きく飛躍する選手が目立つが、這い上がっていく選手の草分け的存在という意味でも、彼らの存在価値は非常に高い。

 最後にGKだが、川口能活、曽ケ端準などのライバルを抑えて、やはり楢﨑正剛が選ばれるべきだろう。出場実績や2010年の名古屋のJ1初制覇、MVP獲得など、本当に目覚ましい活躍を見せた。昨今は外国人GKが席巻しているJリーグだが、日本人守護神が活躍する環境をぜひとも取り戻してほしいものである。

文●元川悦子(フリーライター)

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