5月21日、オランダ・リーグ1部のスパルタはカンブールを4-1で下し、最終節を待たずに6位が確定した。一方、最下位のカンブールはすでに2部降格が決まっている。

 9分、カンブールに先制ゴールを許したスパルタは、24分になってようやく最初のシュートを放つなど、なかなか攻撃の形が作れない。左ウイングの斉藤光毅も自慢のドリブルを封じ込まれていた。しかし、斉藤の動きには切れがあり、決して調子が悪いわけでもなさそうだった。こうして迎えた前半30分、CFラウリツェンが丁寧に落としたボールを、斉藤が左45度の位置からファーサイドに正確なシュートを蹴り入れ、試合を1-1のタイスコアとする。

 この斉藤の同点弾によってスパルタに勢いが生まれ、前半38分には左SBピントが強烈なボレーを叩き込んで勝ち越しに成功。さらに前半42分にMFキトラノ、後半5分にはMFナムリが畳み掛けるように得点を重ね、カンブールを一気に突き放した。

 ゴールを決めてからドリブルに冴えを取り戻した斉藤は、マン・オブ・ザ・マッチに選出された。「1点取れたのは良かったです。でもあと何点か取れましたね」と試合後の斉藤は語った。

 斉藤のこの日の立ち上がりを振り返ってみよう。

 元U-23日本代表、ファン・ウェルメスケルケン際とマッチアップし、さらに二重三重のマークを受けた。この包囲網に斉藤は手こずり、いい形でボールを持っても突破できない。そんな斉藤は、パスでリズムを取り戻す。22分にはハーフウェーライン辺りまで引いてから、ミドルレンジのスルーパスをFWファン・クローイにズバリと通した。27分、今度はショートレンジのスルーパスをCFラウリツェンに届けた。ゴールを決めた直後の33分には軽やかなトラップ&パスでSBピントのオーバーラップを助け、34分には際のファウルを誘った。

「パスを使いながらリズムを取れたのは良かった。最初はちょっとドリブルでどうするのか迷っちゃいました。シュートを打とうとすると、相手は動くものなんです。だけど、カンブールの選手は動かなかった。それでバタバタしてしまった」
 
 ペナルティエリアの左角近辺は、斉藤にとってカットインシュートの見せ場だ。しかし、カンブール戦ではカットインの素振りをしながら斉藤が相手DFと睨み合い、しばらくボールを動かせないまま、ようやくバックパスを出したシーンがあった。

「そうです。そういうのがあったのでリズムが取れなかったんです。でも点を取ってから変な感じがなくなり、自分のペースでできました」

 後半の斉藤にはちょっとした隠れたファインプレーがあった。スパルタのCBがビルドアップのパスをブロックされてしまって、ボールが自陣ゴール近くのスペースに転がってしまった。これをカバーしたのが斉藤だった。なぜ、彼が自チーム最後方のビルドアップのミスに対してカバーする位置にいたのだろうか? 「俺もなんで自分があの位置にいたのか分かりません」と答えてから続けた。

「落ち着いてプレーして、その後もパスをもらって大きく蹴らずにつなげて良かったです。考え続けながらプレーできました」

 この日、76分間に渡り激しい攻防を繰り広げたファン・ウェルメスケルケン際については、「際くんはやっぱり上手いですよね。彼を追っかけようとしても、逆を取られてしまうので(自分が守備をしても)ハマりませんでした」と唸った。
 斉藤は今季6ゴール目を記録。これは横浜FC時代の2019年J2で記録したキャリアハイの6ゴールに並ぶもの。次の最終節、対フローニンゲン戦での記録更新を狙う。

「そうですね。そんなに意識しすぎずにやりたいです。そうしないと自分はダメだと思うので。意識しないことを意識する――とても難しいことですが、このことに対し自分で正解を出すことができればいい経験になると思うので、しっかり考え続けてやっていきたいです」

 スパルタ加入当初の斉藤は第7節、フローニンゲン戦で76分間プレーしたのが最長だった。しかし、今年に入ってから飛躍的に出場時間が伸び、特にここ7試合はフル出場が5試合、88分間の出場が2試合と長時間のプレーが続いている。

「今までの自分は90分間出続けたことがあまりありませんでした。今日は終盤も仕掛けることができましたし、足がつりませんでした。自分は強いチームが相手だと無駄に走って、変なところで頑張ってしまって疲れてしまう。こうしたことを学んでいかないと、これから上に行けません。今日は疲れることなく90分間プレーできて自信になりました」
 
 プロになってから、シーズン終盤の疲労も感じたことがないという。オランダ・リーグ1部初参戦の今季も疲労の蓄積はない。

「こんなにフル出場し続けたことは今までなかったんですが、やっぱり俺、サッカーしたいんで! もちろん、試合中はヘロヘロですよ(笑)。でも休めば回復します」

  レギュラーシーズン終了後に待ち受けるUEFAカンファレンスリーグ出場権を懸けたプレーオフも、斉藤は万全のコンディションで迎えられそうだ。

取材・文●中田 徹

【画像】マン・オブ・ザ・マッチの王冠とトロフィーに笑みを浮かべる斉藤光毅

【画像】SNSフォロワー数が1300万超! スイス女子代表のブロンド美女、アリシャ・レーマンが魅せる厳選ショット集をお届け!