[WEリーグ第19節]浦和L 3−0 千葉L/5月21日/浦和駒場スタジアム

 WEリーグ第19節の2日目、5月21日、優勝を目ざして首位を驀進(ばくしん)する三菱重工浦和レッズレディースは、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースを浦和駒場スタジアムに迎えた。前日に3位の日テレ・東京ヴェルディベレーザが勝利したため、浦和Lはこの試合に勝っても、今節の優勝はない。

 前節のノジマステラ神奈川相模原戦を4−0で制した千葉Lは、三上尚子監督就任後の戦績を2勝2敗6分。直近の8戦は無敗で、その中には優勝争いの一角、ベレーザとの引き分けも含まれている。対戦したチームの関係者からも、現在の千葉Lを相手にする難しさが語られており、浦和Lの独走ムードをストップできるか、注目の一戦だった。

 千葉Lは、首位チーム相手に一矢報いるべく、チームカラーとなっている堅守で立ち向かおうとした。「(立ち上がりから)アグレッシブにしっかりプレーして、失点ゼロで抑えて先制点、という入りをしたかった」と三上監督。浦和Lの楠瀬直木監督も、過去の対戦で、守りに入った時の千葉Lのしぶとさへの強い警戒心を語っていた。

 敵の策略にはまらないところに、今季の浦和Lの強さがある。千葉Lの4−4−2に合わせて、前線から守備をはめ込み、簡単にはボールを前に運ばせない。敵陣でのプレー時間を長引かせ、そこで発生するセットプレーからチャンスをつかむ。
 
 10分、右CKの場面でキッカーの猶本光は、ショートコーナーを選択する。そして、柴田華絵から、塩越柚歩とつなぎ、塩越のクロスを、ファーサイドの一角に潜り込んでいた清家貴子が決めた。

 千葉Lの三上監督は「セットプレーで、しっかりと対策しておかなければいけないところで失点」と悔やんだが、人に強いディフェンダーが揃っている千葉Lの堅城を崩すために、工夫してきた浦和Lのバリエーションを褒めるべきだろう。

 先制した浦和Lは、チェックがよりハードになってきた千葉Lのブロックを強引に突破しようとはせず、その外周あたりでボールを回す。

「相手がイメージよりも寄せが速く、足を出してくる強さがあったので、そこにちょっと戸惑ったかなという部分はあるんですけれども、自分たちも焦れずにボールを回し続けた。もちろん追加点は狙いながら」と清家。

 公式記録によると、この日の気温は27度を超え、湿度も36%と、プレーする両軍の選手にとってはややきついコンディションで、1点のリードは「無理にゴリゴリしなければいけない状況でもなかった」(清家)。ピッチ上のイレブンの選択は、意思統一されていた。

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 ベンチで戦況を見ていた楠瀬監督は、ペース配分と状況を計算に入れた選手の戦いぶりに「前半から行こうという話をしていた。もう少しボールを動かしてくれても良かった」と、注文をつけた。優勢のうちに試合を決めきれず、引き分けや敗戦につながった、昨季の残像がまだ残っているからだ。

 選手は勝利を重ねていくなかで、自分たちの力に自信を持っている。キャプテンの柴田 は、今季の好調の要因として、真っ先に気持ちの強さを挙げた。

「私自身がプレーしていて、メンタル面はすごく大きいかなって感じますね。選手全員が、勝ちにいくメンタルを持っている」

 その言葉を裏づけるかのように、この日も焦らず、決めるべきところで決める。

 62分の2点目もセットプレーから。猶本の右CKをファーサイドで、石川璃音が折り返す。安藤梢のシュートは千葉LのGK清水栞に防がれたが、こぼれ球を菅澤優衣香が後ろにつなぎ、今度は一列後ろで狙っていた清家が、しっかりとシュートを枠に飛ばした。

 その後、途中出場の千葉L・千葉玲海菜の突破からPKを与えるが、ここを失点せずに乗り切ると、逆に74分、ダメ押しとなる3点目を奪う。遠藤優からのショートパスを受けた塩越が、千葉Lの最終ラインの裏へ長いボールを入れる。これを清家が確保し、中央へ折り返すと、走りこんだ猶本が身体全体で押し込むような勢いで、ボールを流し込んだ。
 
 3失点した千葉Lは、その後、3バックにシステムチェンジし、前線の枚数を増やしたが、シュート数を増やすまでが精いっぱい。

「(浦和Lは)試合巧者。慌てずにプレーされて、盛り返せなかった」と三上監督。好調の千葉Lをもってしても、浦和Lを止めることはできなかった。

 この日、同時刻に行なわれた試合で、2位の INAC神戸レオネッサが2−0で勝利と意地を見せた。勝点7差は動かなかったが、ひとつ試合を消化して、残すは3試合のみ。

 次節、浦和Lが長野パルセイロ・レディース戦に勝利すると、他チームの勝敗にかかわらず、WEリーグ優勝が決まる。

「本当はホームで決めたかったけれど、1試合でも早く決めたい。次節で決めます」と清家。その次節は、5月27日、長野Uスタジアムで14時にキックオフ予定だ。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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