イニエスタが神戸を退団する。

 バルセロナで多くのタイトルを獲得し、スペイン代表ではワールドカップで優勝した。2018年の神戸加入時は、Jリーグにとって久しぶりの世界的な大物だったし、桁外れの年俸も含めて大きなニュースになった。

 間違いなくJリーグに刺激を与えたし、プレー面では攻撃的なスキルが抜群で、質の高いパフォーマンスで日本のファンを喜ばせた。よく日本に来てくれたよ。

 一方で、在籍5年間の貢献度は、細かく分析する必要があるかな。神戸への注目度は高まったけど、クラブの強化やJリーグの盛り上がりといった点では、少なからず疑問が残る。

 神戸にもたらしたタイトルは天皇杯のみで、Jリーグの優勝は果たせなかった。バルセロナとの違いに苦しんでいるように見えたし、神戸としてもイニエスタの守備での貢献度の低さに伴う負担が大変だったのではないか。

 今季は年齢や怪我などがあったのかもしれないけど、スタメンが無かった。あれだけの世界的な選手がJリーグで出場機会に恵まれないのは、考えにくい。
 
 かつてのジーコやドゥンガのように、クラブを常勝軍団に成長させる活躍ができたとは言い難いか。ドゥンガのような統率力はあったか? こればかりは本人の性格によるものだから仕方ないとは思うけど、チームを引っ張り上げるところまでは行かなかったんじゃないかな。

 残念だったのが、神戸がイニエスタを獲得した際に、他のクラブが追随しなかった点だ。

 バルサとマドリ―や、マンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドのようなヨーロッパのビッグクラブは、ライバルチームが大きな補強をすれば、対抗しようとする。サウジアラビアでも、クリスティアーノ・ロナウドを獲得したクラブのライバルがメッシを獲ろうとしたという報道があった。

 もちろん、これについては、イニエスタに責任はない。ただ、Jリーグの勢いのなさが浮き彫りになってしまっていたよね。

 イニエスタが抜ける神戸は、若い選手が一生懸命走るサッカーで首位に立っている。ビッグネームがいなくなった途端にJリーグ初優勝となると、ファンはどう捉えるのかな。

【著者プロフィール】
セルジオ越後(せるじお・えちご)/1945年7月28日生まれ、77歳。ブラジル・サンパウロ出身。日系ブラジル人。ブラジルではコリンチャンスやパウリスタなどでプレー。1972年に来日し、日本では藤和不動産サッカー部(現・湘南ベルマーレ)で活躍した。引退後は「さわやかサッカー教室」で全国を回り、サッカーの普及に努める。現在は解説者として、歯に衣着せぬ物言いで日本サッカーを鋭く斬る。

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