アルゼンチンで開催中のU-20ワールドカップ。日本は初戦でアフリカチャンピオンの強敵セネガルを1−0で破って驚きを与えたにもかかわらず、2戦目ではコロンビアに負けてしまった。コロンビアは弱いチームではないが、日本が勝てないチームではない。

 そして第2戦。誰もが日本が決勝トーナメント行きを決めると思っていた。しかし、結果は先制したにもかかわらず逆転負けを喫した。

 どこに問題があるかは火を見るより明らか。ディフェンスだ。日本は2チームに分かれているように見えた。FWとMFは良く連携し、互いに助け合い、ゴールに向かい相手にとっては危険なチームだった。しかし最終ラインの動きは驚くほど悪かった。コロンビアの選手が攻め上がっても、まるで歩いているかのような対応で、私は自分の目を何度も疑った。

 おかげでコロンビアはまるでスーパーで買い物するみたいに簡単に2ゴールを決めてしまった。それもどちらも日本の右サイドを突破されてのクロスだ。
 
 コロンビアの監督エクトル・カルデナス監督もこう語っている。

「日本を困難に陥れ、コロンビアが自分たちらしいプレーをして試合を支配するために、どんな攻撃をしたらいいかを試合を見ながら根気よく探した。そして見つけた日本の弱点が右サイドバックだった。ハーフタイム以降、我々はこの日本の弱点を狙ってプレーを展開した」

 それにしても、コロンビアの指揮官が前半で見抜いたウィークポイントになぜ日本は手を打たなかったのか? とくに右SBの高井幸大のパフォーマンスは、CBのチェイス・アンリとともに厳しく評価せざるをえない。

 コロンビアのTV局『アンテナ2』もこう指摘している。

「日本の選手は8人いたにもかかわらず、ゴール前でコロンビアの選手4人は全員ノーマークだった。この守備の甘さを見ると、コロンビアはあと3点取れたのではないかと思う」

【U-20W杯PHOTO】山根陸が先制点奪取も逆転負け…GS突破は第3戦に持ち越し|U-20日本1−2U-20コロンビア
 一方、日本の主役は山根陸だった。何より彼の冷静さに驚いた。大舞台でも緊張せず集中し、その堂々たるプレーぶりは19歳には見えなかった。初戦で活躍した松木玖生は今回も多くのシュートを放ち、誰よりも動き回った。走行距離は12.2キロだ。コロンビアのTVもさかんに松木を褒めていた。

 コロンビアメディアはこの勝利をこぞって喜んでいる。

『アンテナ2』
「コロンビアは効率よい戦いをした。日本は難しいチームだったが試合ではコロンビアのテクニックが勝った。例えばDFのアンドレアス・サラザールは佐野航大を翻弄したシーンはいかにもコロンビアらしかった。これがコロンビアのサッカーだ」

スポーツサイト『エル・デポルティボ』
「コロンビアが逆転できたのはひとえにカルデナス監督のおかげだ。彼は前半、日本がどんなミスを犯すかを細かく研究し、作戦を変更。トマス・アンヘルを投入し、オスカル・コルテスを左サイドに移した。(日本の)右サイドは一番弱く、簡単にゴール前にたどり着けたからだ。日本のやや散漫なサッカーに対し、コロンビアはうまく対応できていた」

コロンビアの主要日刊紙『エル・テンポ』
「日本の果敢な攻撃に対抗するため、コロンビアは最後の1分まで懸命にプレーしなければいけなかった。日本が最後まで追加点をできなかったのは、コロンビアDFの頑張りのおかげだ」

【動画】ブラジル人記者が絶賛した山根の先制ゴール
 コロンビアは強いとはいえ、日本が負けるべきチームではなかった。こうした失敗はW杯ではあってはならない。一つの敗戦が致命傷となる。セネガル戦は運よく勝利し、コロンビア戦は不運で負けた。それではダメだ。サッカーは確かに運も大切だが、それが任せにしていたら先に進むことができない。たとえ運が悪くても勝てる強さが欲しい。

 3戦目の相手はヨーロッパ予選を2位で通過したイスラエル。すでに2敗しているため、背水の陣で臨んでくるだろう。それが、日本にとって逆風になるかもしれない。

取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。