芸能界屈指のサッカー通で、J1からJ3まで幅広く試合を観戦。Jリーグウォッチャーとしておなじみの平畠啓史氏がセレクトする「J1月間ベストイレブン」。5月の栄えある11人はどんな顔ぶれになったか。MVPには、5ゴール・3アシストの神戸のエースを選出した。

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 GKはC大阪のキム・ジンヒョン。飛んでくるボールに対し、無駄のないスムーズな反応は見事。安定感はもちろん、ビッグセーブでもチームを救う。11節の大阪ダービー、アディショナルタイムのイッサム・ジェバリのシュートに対するセーブは、まさにチームを救った。

 そして、ロングフィードの飛距離や正確性で攻撃の起点にも。かつ日本語も完璧。5試合で2失点という数字も十分だが、数字以上の活躍を見せた。

 右SBではないが、右に入ってもらったのは札幌の金子拓郎だ。ドリブルが最高。カットインから得意の左足で鋭いクロス、強烈なシュートだけでなく、縦に突破して右足でクロスを上げ、対応するディフェンスを困惑させる。1対1の仕掛けが始まるとワクワクする。4ゴール・2アシストと数字も残した。
 
 CBは横浜の畠中槙之輔。堂々の守備対応で風格も漂う。攻撃的なチームの中で、1対1の対応も少なくないが、危なげない対応。充実の期間に入ってきている。

 鹿島の関川郁万は、以前は感情や闘争心が技量を上回ってしまうようなところも見受けられたが、今シーズンは良いバランスになってきている。関川が本来持っているポテンシャルが発揮されるようになってきた。

 また13節・名古屋戦で、マテウス・カストロの素晴らしいクロスをファーサイドでキャスパー・ユンカーがヘディングシュートという場面では、難しい体勢ではあったが、シュートコースにジャンプして頭に当てて失点を防いだ。12節のC大阪戦では得点も決めた関川。守れてセットプレーでゴールを奪える鹿島らしいCBになってきた。

 左SBはC大阪の山中亮輔。相手ゴール前にスリリングなシーンを演出する左足のクロスは、ボールスピードもあり魅力的だ。レオ・セアラにピタリと合った時は爽快だ。
 
 ボランチは推進力のある浦和の伊藤敦樹と神戸の山口蛍。伊藤は11節の広島戦で1ゴール・1アシストの活躍を披露した。浦和の1点目、酒井宏樹に出したパスは繊細そのもの。大胆さと繊細さを兼ね備えたボランチで、日本代表に初選出された広島の川村拓夢とのマッチアップも非常に面白かった。

 山口の推進力にスランプなし。ボールカットの勢いそのままにゴール前までスプリントすれば、チームに前向きの力を与えられる。好調神戸の原動力、まさにエンジンである。

 中盤の右には横浜のヤン・マテウス。昨シーズン途中の加入だったが、今シーズンはフィット感が上がって、ゴールに関わるシーンで自身の技術やスピードを駆使することが増えた。5月は3ゴール・3アシスト。今後もさらに数字を伸ばしそうだ。
 
 中盤の左には神戸の武藤嘉紀。ザ・エネルギッシュだ。一つひとつのプレーの強度や迫力がほかの選手と明らかに違う。攻撃だけでなく、前線からのプレスにもエネルギーを余すことなく放出。オンでもオフでも圧倒感がある。

 FWの1人目は鹿島の鈴木優磨だ。むき出しの熱い闘争心が、プレーにダイレクトに伝わる漢。15節・鳥栖戦のアディッショナルタイムにヘディングで決めた同点弾は魂を感じた。ただ頭に当てるだけではなく、頭でゴールにねじ込むようなヘディングシュート。ピッチに出る前から闘争心が溢れて顔が怖い。その怖さがいいのだ!これから戦いの場に行くのに甘っちょろい顔をしている場合ではない。最近、やさしい大人が多い。だからこそ貴重だし魅力的だ。これからも燃え滾るような闘争心でゴールに向かってほしい。

 そして、もう1人のFWで5月のMVPは神戸の大迫勇也。サッカー界積年の懸案事項、決定力不足の解決策を持つ漢。5ゴール・3アシストと得点に絡むだけでなく、空中戦、チャンスメイクなど、あらゆる場面で格の違いを見せつけた。

取材・文●平畠啓史

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