最後の言葉も、彼らしさ全開だった。

 ミランのズラタン・イブラヒモビッチが6月4日、セリエA最終節のヴェローナ戦後、現役引退を発表した。イタリア紙『Gazzetta dello Sport』によると、イブラは会見で、引退することは「誰にも言っていなかった」と明かしている。

「クラブや家族にもだ。君らメディアにも我慢してくれて感謝しているよ。これで仕事が減るな(笑)。明日から自分は自由な人間だ。人生の新たなチャプターを始める。いくつかオファーがあったのは事実だ。でも、もうやめると決めていた」

「(この日のミラノで)雨が降っていて『神も悲しんでいる』と思ったよ。自分がゾンビみたいだった。冗談も言わず、話さず、緊張していた。でも、もう自分の未来を受け入れたんだ」

 2度にわたってミランに在籍した元スウェーデン代表FWは、「初めてミランに来たときは幸せだった。それから愛を見つけた」と、特別なクラブであることを強調した。

「このクラブは初日から家だと感じさせてくれたんだ。戻ってきたときはひとつ約束をして、それを守った。情熱を失うことは決してなかったんだ。もうこのチームは2つ目の家族になった」
 
 特別な関係だったのは、代理人だった今は亡きミーノ・ライオラも同じだ。「ライオラとはすべてを分かち合った。彼のためなら続けていただろう。さらに手数料を求めていただろうね(笑)。ミーノ、すまん。でも本当のことだろ」と、笑いを誘いながら振り返っている。

 数々の伝説をつくってきた41歳は、「ロッカールームが恋しくなるだろう。違う世界になる。でも、準備はできているよ。この10日間で決めた。考えて、『もう十分だ』と思ったんだ。今日の試合に出られなかったのは残念だが、仕方ないさ。悔いはない」と話した。

「これから何をするか理解しなければいけない。監督やスポーツディレクターには責任がある。選手のほうが自分でいられ、監督ではもっと制限されるだろう。監督ならフェラーリで来ることもできなくなるじゃないか。イブラヒモビッチならできるかもしれないけどね。一般論として、サッカーから去ることはないと思う。でもまたこの世界に戻るなら、ゼロから始め、成長しなければいけない」

 これから何をするかは、まだ分からない。確かなのは、「新たなイブラヒモビッチ」の誕生はないということだ。それは「エゴが理由ではない」という。

「自分がやってきたことが、そう示している。別の歴史、別の選手になるのさ。自分も始めたときはマルコ・ファン・バステンと比較された。だが、マルコはマルコ、イブラはイブラだ」

 唯一無二、これほどこの言葉が似合う選手はいなかった。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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