11月25日、エクセルシオール戦の当日、フェイエノールトのアルネ・スロット監督はストライカーのサンティアゴ・ヒメネスに電話して、コンディションを確かめた。

 18日に22日と、メキシコ代表はCONCACAFネーションズリーグ準々決勝をホンジュラス相手に戦い、PK戦の末ベスト4進出を決めた。ヒメネスは23日夜にロッテルダムに着くと水泳で心地良く身体を動かして熟睡。それから翌々日の試合当日を迎えた。スロット監督からの電話に、ヒメネスはこう答えた。

「俺はフィットしているし、ぐっすり眠った。試合に出る準備は整っている」

 その言葉は確かだった。開始5分にボレーシュート、61分にゴール正面から目の覚めるようなクリーンシュート、そして82分には右45度からゴール左隅に蹴り込む技ありのシュートを決めてハットトリックを完成させた。これでヒメネスは今季16ゴールとなり、AZのCFパブリディスを抜いて得点王争いの1位に返り咲いた。ヒメネスの活躍でチームは4−2で勝利している。

 上田綺世は83分、ヒメネスに代わってピッチに入った。ゴール前で味方から鋭角のクロスを引き出すシーンもあったが呼吸が合わず、チームメイトにスルーする形になった。

「与えられた時間の中で自分らしさ(を出すこと)と、チームへの貢献をして、出場時間を勝ち取りたい。まずは出場時間。出場時間と信頼は比例してくると思う。信頼と出場時間を勝ち得て、自分の結果を残したい。そのきっかけがまずは必要。きっかけを掴むまでが一番大変なんですけど、そのきっかけを自分で掴めたら」
 
 ここ3試合、リーグ戦でノーゴールだった鬱憤を晴らすかのように、エクセルシオール戦で固め取りしたヒメネス。ライバルの活躍を上田はどう見るか?

「試合に出ている選手が活躍していることは、自分にとって刺激になる。自分に足りないもの、チームで求められていることを、彼が体現している。正解がそこに転がっているわけです。それを自分が見習わない理由はない。どんどん自分のものにしていきたい。彼の強みを僕がコピーできるわけではないので、できる範囲はありますが、自分のプレーの幅を広げたり、チームにフィットしていくことを積極的にやっている最中です」

【PHOTO】日本代表のシリア戦出場16選手&監督の採点・寸評。スコアラーと指揮官に7点台の高評価。MOMは4Aの14番
 日本代表ではワールドカップ・アジア2次予選のミャンマー戦でハットトリック、シリア戦で2ゴールと大当たりした上田は、日本メディアに「相手が相手でしたから」と答え、エクセルシオール戦後も同様の言葉を残した。しかしながら、ストライカーはゴールを決めることで自信が生まれ、そのことでチームに勢いがつくもの。やはり、上田がゴールを重ねたことは、本人とチームにいい影響を与えたのではないだろうか。

「それがフォワードの特権というか、フォワードがもたらす効果のひとつだと思っています。特にミャンマー戦なんかは、先制点がかなり重要な試合でした。前半の10分台で(上田が11分に)ゴールを決めたのは大きかった。 シリア戦はちょっと気まずい雰囲気になっている中で、タケ(久保建英)が一発決めてがらりと試合が変わった。

 ああいう相手に対して先制点を、どこで取れるかというのがすごい重要で、(取れない時間を)引っ張れば引っ張るほど、 どんどん重い雰囲気になるし、 僕らにも焦りが出たりして、相手のリズムになっていくと思う。前半のうちに点を取るっていうのはすごく重要。そこでフォワードが決めたらより乗ると思う。タケが取った後に、すぐに重ねて取れたのは良かったと思います」

 上田、久保といった取るべき人がゴールを決めると、やはりチームのムードが変わるのだろう。フェイエノールトもまた、ヒメネスがゴールを決めて、本人とチームに弾みがついて勝利する流れができている。

「そうですね。サンティ(ヒメネス)が点を取れない試合はけっこう苦しんでいると思うんですよ。言い方は悪いですが『サンティが出ないと勝てない』という見方をされるのかもしれません。でも、そこがフォワードのひとついいところだし、必要とされる部分です。

 サンティの姿勢、ゴール、サンティがいるっていうことが、チームにとっての信頼です。チームメイトも自信を持ってボールをサンティに預けているし、サンティも自信を持ってプレーしている。そこには信頼があるし、それがフォワードのいいところだと思うんです。それを僕も勝ち取らないといけない。それは代表でもクラブでも同じなのかもしれません」
 
 日本代表では豊富なシュートのレパートリーを披露し、結果も残した上田だが、所属クラブでは出場時間に恵まれない。

「試合に出るのが当たり前の環境では、成長率は決して高くないと思っています。上手くいっていなくても成長できる部分は多くある。今は成長のときかな、と思います」

取材・文●中田 徹

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