国内リーグとヨーロッパカップ戦はまったく違う大会だ。

 国内リーグでの調子がそのままヨーロッパでの戦いの物差しになるわけではないし、その逆もまたしかり。ドイツのブンデスリーガでいえば、リーグでバイエルンが昇格組のハイデンハイムに2−0とリードしながら2−3で逆転負けを喫したかと思ったら、その数日後に行われたプレミアリーグ首位のアーセナルとのチャンピオンズリーグ(CL)の試合では、終盤まで優勢的な試合運びで、アウェーで上々といえる2−2の引き分けに持ち込んだ。

 あるいはブンデスリーガで首位を独走し、見事クラブ史上120年で初となるリーグ優勝を果たしたレバークーゼンが、ヨーロッパリーグ(EL)で最終的に勝利したとはいえ、アゼルバイジャンのカラバクに大苦戦したり、プレミアリーグの雄リバープールが、ホームでのアタランタ戦で0−3と完敗したり。いろんなことが起こるのだ。

 CL、EL、そしてヨーロッパカンファレンスリーグ(UCL)と、欧州には3つのカップ戦がある。CLが世界最高峰のリーグとして全世界から最大限の評価を受けているのはだれもが認めるところだが、ELやUCLもそれぞれに刺激的で、いろんな経験ができる大会なのは間違いない。
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 スイスリーグのセルベッテFCでプレーする常本佳吾は、欧州カップ戦でプレーする価値について次のように語ってくれた。

「やっぱりヨーロッパリーグでいろんな国のチームと対戦して、いいチームと対戦できるのはすごく自分の財産になった。来年もそこでやりたいから、リーグ戦にかける思いも強いです。そこでヨーロッパリーグ、もちろんチャンピオンズリーグを目ざしてやっていきたいですね」

 CL出場を厳命とされるクラブにとってはELやUCLに物足りなさを感じたり、どこか100%の力で向き合いきれない雰囲気がでてきたりする。

 一方で、欧州カップ戦に出場すること自体がクラブにとっても、選手にとっても、指揮官にとっても、ファンにとっても極めて貴重な機会というクラブもたくさんある。そこにかける思いが違う。だから勝った時の喜びが大きな力をもたらすし、逆に負けたときの悔しさや失望が後を引いてしまうこともある。
 
 常本が興味深いことを話してくれた。

「正直、セルベッテ(の調子)がちょっと悪くなったのも欧州カップ戦が終わった、負けてからなんです。自分たちが夢見てたじゃないけど、ヨーロッパで勝ち星をつけられて自信になった部分も大きかったので、それがちょっとなくなったことも影響してるのかなっていうのは個人的に感じます」

 ELグループリーグでスラビア・プラハ、ローマに次ぐ3位で終えたセルベッテは、UCLの決勝トーナメント・プレーオフを勝ち抜いてラウンド16に回ったが、そこでチェコのプルゼニにPK戦の末に敗退。常本が言うように、セルベッテはそれ以来、5試合連続で勝ち星なしとなった(1分け後4連敗)。

 もちろんUCL敗退だけが理由ではないが、いずれにしても異なるコンペティションを過密日程の中で戦い抜いていくというのは、やはりどのクラブにとっても簡単なことではない。とはいえ気持ちを切らしてしまったり、うまくメンタルコントロールができないままだと、臨まれるクオリティをピッチにもたらすことはできない。そのままリーグでの順位を上げることができず、翌シーズンのヨーロッパコンペティション参加の資格を失うことにもなってしまう。
 
 常本もそのために自分にできることを求め続けている。

「やっぱりステップアップってところは常に意識してますし、そのためにも、自分ができるアシストと1対1の自分の長所のところは絶対に負けないように伸ばしつつ、それが結果としてチームの優勝だったり、カップ戦優勝だったりってところに繋がれば、さらに選手としても評価されます。そこはこれから目ざしていきたいです」

 欧州ではどこもリーグ終盤に向けて緊張感が高まる時期だ。順調なクラブ、荒波にいるクラブ。どこも様々な状況と戦っている。シーズン最後にどんなドラマが生まれるのか。うまくいかないときには《気持ちを切り替えろ》とよくいわれるが、新しい具体的な目標にチーム全体の気持ちが向くように整理できるかがカギになるのだろう。

 セルベッテは33節のグラスホッパー戦を1−0で勝利し、連敗を4で止めることができた。ここからは上位チーム同士で対戦するプレーオフ期間に入る。ここから再び上昇気流に乗っていきたい。

取材・文●中野吉之伴

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