2024年5月11日、味の素スタジアムで行なわれた柏レイソル戦、ホームのFC東京は仲川輝人のボールロストからいきなりマテウス・サヴィオに決められた(2分)が、そこで意気消沈することなく、むしろアグレッシブなスタンスで攻め込んだ。

 4-2-3-1システムのボランチコンビ、松木玖生と高宇洋を軸に縦パスを意図的に入れ、柏の守備網を徐々に、そして確実に打ち破っていった。6分にCKのチャンスから仲川が同点弾を挙げると、32分にディエゴ・オリヴェイラがPKを沈め、さらに37分には松木がスーパーボレーを突き刺して3-1とした。

 松木のゴラッソが決まった瞬間、スタジアムのボルテージは最高潮に達した。この時点で、FC東京の勝利を確信したファン・サポーターは少なくなかったはずだ。それほどこの日のFC東京には勢いがあったし、0-1から3-1とするまでは内容も伴うパフォーマンスだった。

 しかし、前半のアディショナルタイム、まさかのアクシデントが起きる。自陣の深い位置で森重真人が細谷真大にボールを奪われると、それに反応してエリア外に飛び出したGK波多野豪が細谷を倒してレッドカード。比較的早い時間帯に数的不利の状況となってしまった。

 GK児玉剛を投入する代わりに攻撃のキーマンである仲川を下げ、後半は4-4-1システムで戦ったが、当然ながらチームの重心は下がり前半の勢いを失う。そして46分に柏の犬飼智也、58分には島村拓弥に決められて3-3と追いつかれた。
 
 こうなるとどうしても、勝てなかった原因として波多野の退場が浮かび上がる。3-1の状況で強引に細谷を止める必要があったのか。ディレイして時間を稼げなかったか。最悪ゴールを奪われても3-2という思考はなかったのか。結局、あのタイミングで10人になってしまったことが痛手だった。そう考えると、波多野が試合を壊したとも言える。

 波多野が退場したのは今季2度目。5節の川崎戦でも同じようなシチュエーションで一発退場しているのだから、「またか」と言われても致し方ない部分はある。 

 ただ、波多野が飛び出すシチュエーションを作ったのは森重であり、同じく仲川も超危険なエリアで致命的なボールロストをした。波多野だけを責めるのは少し違う気もする。  

 いずれにしても、試合は90分ある。前半だけ内容が良くても意味はない。犬飼にロングシュートを叩き込まれた局面では誰もボールに詰めていなかったし、全体的なミスの多さを踏まえれば3-3という結果はある意味妥当なのかもしれない。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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