長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)が5月24日、東京都内で現役引退会見を実施した。

 今季限りでユニホームを脱ぐ長谷部は、13分間に及ぶ冒頭の挨拶で決断の理由や周囲への感謝を伝えた後、質問の時間をたっぷり取り、計2時間の会見で自らの胸の内を明かした。そのなかで印象的だったのが、代表とクラブの両立に関して語ったものだ。

 40歳の元日本代表キャプテンは、ロシア・ワールドカップを最後に退くまで、114キャップをマーク。監督が代わっていくなか、中心選手であり続けた。ただ当然、良い思い出だけでなく、辛く過酷な場面も少なくなかった。

「ドイツに渡った2008年から、2018年のロシア・ワールドカップで引退するまでの10年間。この10年間はクラブと日本代表の両立の部分で正直非常に苦しんだというか、しんどかったなと思う10年間でした。もちろん良いこともたくさんありましたけど、どちらかというと2つを両立する難しさを非常に感じました。

 ただ、苦しかった期間だったからこそ、一番人としても成長できた時期かなと思っています。代表を退いてからのアイントラハトでの今日までの日々は、一番純粋にサッカー選手として、サッカーを楽しんでいたというか、一番サッカー選手として正当に皆さんに評価していただいた時期じゃないかなと思っています」
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 特に覚えているのは、ヴォルフスブルクから移籍を模索するも、結局は残留となった結果、干されてしまった時だという。当時、日本代表ではアルベルト・ザッケローニ監督が指揮を執っていた2012-13シーズン序盤での出来事だ。

「やはりザッケローニ監督の時のクラブで、全くベンチにも入れない時期は辛かったです。移籍問題で揉めてというか、あまり上手くいかなくて、チームに残ることになって、ベンチにも入れず、練習も一緒にさせてもらえない時期がありました。

 あの時期はそれでも代表に呼んでもらって、キャプテンとして周りの選手に示さなければいけなかったので...キャプテンは言葉で伝えることもあると思いますけど、やはりプレーや背中で見せなきゃいけない部分もある程度はあると思っているので、そういうところで説得力がない部分もやっぱり感じていたし、すごく悩んだ苦しい時期でしたね」

 逆境が人を強くする――。その言葉を22年のキャリアで体現した長谷部。「何か抜きんでたものがあるわけではない」。それでも不屈の闘志とたゆまぬ努力で屈指のレジェンドとなり、誰からも惜しまれながらピッチに別れを告げる。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)

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