コパ・アメリカ2024決勝、アルゼンチン対コロンビアは、試合前からただならぬ雰囲気に包まれていた。

 試合開始まで1時間を切っても、スタンドはがらがら。ウォーミングアップのため、ピッチ上に姿を現わした選手たちも、なぜかほとんど身体を動かさないまま、再びロッカールームへと戻ってしまった。

 ほどなく、試合開始が30分遅れることが場内に告げられた(実際には1時間以上遅れた)。チケットを持たない(主にコロンビアの)サポーターが大挙して無理やり押し入ろうとしたため、一時、観客の入場をすべて止めてしまったためだった。

 遅れて試合が始まっても混乱は続いた。

 最もピッチに近い1階席には(チケットを持っていないのか、上階のチケットを持っているのかは分からないが)大勢のサポーターがなだれ込み、通路にも人、人、人。将棋倒しなどの事故が心配されるほどになっていた。
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 ようやく警備員が駆けつけ、席についていない観客を退去させ、通路に空間が生まれたのは、前半もなかばを過ぎた頃だった。
 
 しかし、そんな混乱がありながらも、ピッチに立つ選手たちが試合に集中できていたのは幸いだった。得点こそなかなか生まれなかったものの、両チームが互いにチャンスを作り、最後まで結末が予測できない熱戦は、間違いなく好ゲームだった。

 しかも、今大会の主役であり続けてきたリオネル・メッシが、右足首を痛めて途中交代するアクシデントも発生。それでもなお、試合への興味が削がれることはなく、ハイレベルな攻防が繰り広げられた。

 結局、勝負は90分で決着がつかず、延長戦へ突入。決勝点となるこの試合唯一のゴールが生まれたのは、112分のことだった。

 レアンドロ・パレデスからのパスを、ジオバニ・ロチェルソがワンタッチでさばいて、ディフェンスラインの背後へスルーパス。これで抜け出したラウタロ・マルティネスが、GKの頭上を破る強烈なシュートを叩き込んだ。

 あとは、わずかな時間を残すだけ。アルゼンチンはニコラス・オタメンディを投入し、5バックで守備固め。対するコロンビアは、前線の人数を増やして同点ゴールを狙うも、試合は1−0のまま、終了のホイッスルを聞くこととなった。
 
 アルゼンチンは前回大会に続く連覇達成。それも、ワールドカップ優勝を挟んでのビッグタイトル3連覇である。

 またしてもチームをタイトル獲得に導いた、リオネル・スカローニ監督が語る。

「このチームからは驚かされてばかりだ。チームは常に何か特別なことを与えてくれる。彼らのプレーを見られるのは嬉しいし、彼らが自分自身をチームに捧げてくれることには本当に感謝している」

 今回のコパ・アメリカを振り返ってみると、あたかもメッシのために用意された大会であるかのようだった。

 試合会場はメッシのユニホームを着たファンであふれ、試合のハーフタイムには、メッシが出演するビールの、クレジットカードの、ホームセンターの、それぞれCMが大型ビジョンで流される。
 
 メッシの扱いは、とにかく別格だった。しかし、アルゼンチンはメッシだけのチームではなかった。

 怪我のメッシに代わり、ピッチに立ったニコラス・ゴンザレスはサイドからの突破に加え、ヘディングという新たな武器でゴールに迫る。

 そして、延長に入って3枚代えで投入された、パレデス、ロチェルソ、ラウタロが3人の連係で決勝点を生み出す。むしろアルゼンチンは、メッシの交代後にその底力を見せつけた。

 表彰式後、入場ゲート前に横たわる、折れ曲がった金属柵をよけるようにスタジアムを出た時には、すでに日付が変わっていた。

取材・文●浅田真樹(スポーツライター)

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