瀬川祐輔にとって柏移籍は「奇跡」だが、無名の高校時代も実力はスゴかった

瀬川祐輔にとって柏移籍は「奇跡」だが、無名の高校時代も実力はスゴかった


「なんなんだ、コイツは!」
 
 そうした衝撃を受けたのは、記者が当時高校2年生の時、高校選手権東京都大会の予備予選で対戦した、日大二高のある選手からだった。今季、大宮から柏に移籍した瀬川祐輔だ。
 
 応援席から見ていたのだが、とにかく強くて、速い。加えて、状況判断にも優れ、味方を使う判断力にも長けており、実力は図抜けていた。そして、彼を抑えようと翻弄されたチームメートたちが守備陣形を崩して失点し、涙を呑んだ姿を目の当たりにした。
 
 母校が日大二高と近隣校だったこともあり、練習試合もした。その時のことを聞けば、瀬川も「あー、やりましたね」と覚えている。もちろん彼には歯が立たず、試合後はチーム内でも「瀬川って、ホントすごいな」という話で持ちきりになった。
 
 それほど衝撃が大きかったとはいえ、瀬川が所属していたのは全国大会とは無縁の高校。その後、彼は大学サッカーで強豪の明治大に進学したが、4年生の途中まではコンスタントに先発に名を連ねていたわけでもない。正直、瀬川のプロ行きは難しいかもしれないと思っていた。
 
 しかし、あの時に衝撃を与えた高校生はプロへの道を切り開いたばかりでなく、順調なステップアップを遂げていくのだ。
 
 大学4年になって徐々にスタメンに定着すると、全日本大学サッカー選手権で活躍し、2回戦ではゴールを記録。チームはベスト4に終わったが、大会後に群馬への入団を勝ち取った。
 
 その後は群馬(当時J2)でのルーキーイヤーに42試合・13得点という結果を残し、翌年には当時J1の大宮に移籍。日本のトップカテゴリーまで登り詰めた。
 
 そしてプロ3年目の今季、瀬川は昨季4位の柏へ完全移籍を果たした。タイトルを狙えるクラブへの移籍は本人も「奇跡」と言う。柏は今季ACLを控えているが、記者からの「ACLのように世界を相手に戦うことはこれまでもあったか?」という質問に、瀬川は「小(学校)、中(学校)、高(校)は世界なんか見たことない」と無名時代を回想しながら謙遜する。
 
 大学卒業後は就職をするつもりだったようで、「プロになれるとは思ってもいなかった」。だからこそ、自身でも今回のステップアップには驚いているようだが、「大宮まではJ1に行くことを目標としてやってきた。自分なりに活躍はできたと思っている。先ほども言いましたが、正直、レイソルさんに来れたのは奇跡。でも、チャンスがあるからには挑戦したいので、結果を出せるように頑張りたい」とさらなるキャリア向上への抱負を語る。
 
 そこで、「順調なキャリアを築けた要因」を聞いた。すると、逞しさが増した23歳は、熱い言葉を口にした。
 
「目の前の相手に負けない。最後は気持ちの部分。そういうメンタリティを持った選手は、試合の流れを変えられる。僕は技術がある方ではないので、そういう熱いプレー、諦めないところ、そこかな。あとは、(自分は)使いやすいプレースタイル。ACLとか、たくさん(試合が)あるので、ターンオーバーを含め、僕も力になれるプレースタイルだからオファーを頂けたのかなと思う」
 
 無名の高校時代からコツコツと実力を高め、熾烈な競争を生き抜いてきた。そうした経緯を知っていた記者は、その言葉の意味がよく分かった。全国とは無縁でも、「諦めないメンタリティ」が瀬川を柏への入団まで押し上げたのだ。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
 

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