【北澤豪のリーガ見聞録|第3回】例年にない面白さ! 2強以外の「戦略的な戦い」によって上位が混戦に

【北澤豪のリーガ見聞録|第3回】例年にない面白さ! 2強以外の「戦略的な戦い」によって上位が混戦に


 ラ・リーガの現状を、リーガ解説のスペシャリストに訊くインタビューシリーズ『リーガ見聞録』。その第3回には、元サッカー日本代表の北澤豪氏が登場! 今シーズン、上位が混戦となっているリーガのここまでを振り返ってもらった。

―――◆◇――◇◆―――

――まずは、12節を消化したラ・リーガの戦いを振り返っていただけますか?

 近年まれに見る大混戦だよね。(バルセロナとレアル・マドリーの)2強中心と言われてきたリーグだから、展開としてはかなり新鮮。これが“ポジティブな変化”かどうかはシーズン通して見てみないと分からないけど、例年にない面白さがあるよね。もっとも、マドリーのファンからすると、ちょっと足踏み状態が続いていて複雑な気持ちかもしれないけど。

 ただ、この状況が続けば、バルサだってずっと首位でいるのは難しい。メッシは回復したけど、主力数人が故障していて、守備の不安定さも指摘されているし、イニエスタがいなくなったりと、そういう時代の変化が起きている中でどうやって対応していくのか。そこがポイントになるんじゃないかな。


――その2強を追い上げる側で気になるチームはありますか?

 どのクラブも全体的に、すごく戦い方が戦略的になってきているよね。その意味では、監督の重要度というのが、以前にも増して高まってきていると言えるかもしれない。いわゆる中堅以下のチームが強豪と対戦するときって、これまではせいぜい守備を固めてカウンターくらいの感じだったけど、もっとディテールにこだわった戦いが見られるようになってきている。分析が進んで、いろんな場面を想定した対策がなされているから、力の差はあっても、2強が意外な負け方をしたり、上位が混戦になったりという状況が生まれているんだろうね。


――ここまでの戦いを振り返って、もっとも気になるチームは?

 やっぱりバルサってことになるのかな。クラシコをメッシが欠場することになって、意外と“ナンバー2”となるべき存在が見えてこない今のバルサで、だれがチームを牽引するんだろうって心配してたんだけど、そういう状況になれば、ちゃんとスアレスが出てきて、あっさりハットトリックを決めてしまうんだよね。

 このナンバー2に関しては、コウチーニョだっていう人もいるだろうし、ラキティッチだ、ブスケッツだ、っていろんな意見があると思うけど、普段はメッシという巨星の陰に隠れている彼らが、ああいう試合ではちゃんと主役を張ってくれる。改めて、すごい選手が揃っているチームだなぁって感じさせてくれたよね。

 グレミオから移籍してきたアルトゥールなんかも、中盤で細かくパスをさばいている時はまるでシャビだし、左サイドでコウチーニョやジョルディ・アルバとトライアングルを形成している時は、本当にそこにイニエスタがいるかのようだった。
――マドリーは暫定監督のソラーリが正式に監督に就任しました。それについてはいかがですか?

 まあ、結果がすべてですからね。暫定監督として戦った試合で、彼は4連勝と結果を出したわけだし、このタイミングで外から大物監督を引っ張ってきても、それはそれでリスクがある。

 ソラーリがどんな監督かはこれからはっきりすると思うけど、今回の監督交代劇を経て改めて感じたのは、タレント力を活かしたチーム作りをすることが、結局マドリーをマドリーたらしめるのかなってこと。

 ジダンの時代も、戦略的にこれって言えるものは少なくて、バルサのように明確な攻撃スタイルも持っていなかった。でもジダンは、あえてそうしていたんだろうね。型にはめず、選手の個性を引き出すために。ロペテギはそこに、組織を持ち込もうとした。

 ただロペテギのサッカーも、最初は上手くいっていた。彼はあれだけのタレントを揃えたチームに規律を持ち込み、ベンゼマやベイルにもしっかり前からプレッシングをかけさせ、球離れを速くし、個ではなく組織で戦うサッカーを植え付けようとした。クリスチアーノがいなくなった状況では、それはそれで面白いのかなって思ったけど、結局上手くいかなかった。

 その理由としては、次第に規律を守れなくなってきたスターを簡単にベンチに下げてしまったこと。マルセロ、ベイル、クロースといった重鎮でも、彼は平気でベンチに置いた。きっと選手を平等に扱いたかったんだろうけど、そのやり方はマドリー向きではなかったね。
 
 特別な才能を持った選手を特別に扱って、信じられない勝ち方をする。結局、マドリーらしさはそこにあるってことに周囲が気づいたからこそ、ソラーリの内部昇格という結論に至ったんじゃないかな。

 
――ソラーリは若手の起用にも積極的ですよね?

 自分がBチームを率いていたからね。ただ、若手を試すのは大切だし、絶対に必要なことだとは思うけど、そこがこのチームの一番のポイントじゃない。やっぱりその時代のトップクラスの選手をズラリと並べて、派手に勝つところにマドリーらしさがあるわけだからね。
――アトレティコはどうですか?

 シメオネ監督の、まず守備から入って、そこからどう攻撃を構築していくかという考え方は、決してスペイン的ではないけど、指導者にとっては凄く勉強になるよね。

 彼は点が欲しい場面で、守備的MFを入れたりする。そこはFWじゃないの? って思わず首を傾げてしまうんだけど、彼は冷静にこう言う。「ゴールが欲しいから守備的な選手を中盤に入れた」ってね。

 あの情熱的な見た目に騙されがちだけど、彼はすごく緻密な考えを持った監督だね。どう攻めるかを考える前に、まずボールの奪いどころを作ることを考える。「1点が欲しくてトーマスを入れた」みたいな辻褄が合わないような言い方をするんだけど、そもそも、モノの見方が違うんだよね。
 
 
――そのアトレティコは徐々に盛り返してきましたが、バレンシアは依然として苦しんでいるようです。

 バレンシアはゴールが奪えないだけで、どの試合も内容的には悪くない。タレントも揃っているから、時間が解決してくれると思うよ。それよりもビジャレアルのほうが問題じゃないかな? 彼らはどこに進もうとしているのかよくわからないもん。

 ただサンティ・カソルラ、あの選手は天才だね。とくにボールを持ったときのプレーは、超一流だよ。試合の結果がどうであろうと、彼のプレーが見られればファンは満足なんじゃないかなって思っちゃうくらい。タッチといい、裏を狙ってパスを出すタイミングといい、その出てくるボールのやわらかさといい、凄くいいよね。プレミア(アーセナル)に行く前よりも、客観性があるというか、プレーに余裕があるんだよね。

 
――他にもスゴイ!と思うような選手はいますか?
 
 セビージャのベン・ヤーデルは好きだね。もとはフットサル選手だから、ボールの持ち方が丁寧で、足裏も使えて、スピード感もある。

 あと同じセビージャのフランコ・バスケスもどっちかっていうと、そういうタイプだよね。彼やガンソのような、決してスピードを上げない“ウォーキングサッカー”をする選手は、監督の間でも好みが分かれると思うけど、僕は嫌いじゃないかな。スピードはそんなに上げないけど、技術があるからミスは少ないし、瞬間的なスピードとそれを創り出すのは緩急だと思うから。ベン・ヤーデルなんかはそういうのを持ってるよね。


取材協力:WOWOW
取材・文:竹田忍(サッカーダイジェストWeb編集部)

※次回の『リーガ見聞録』は、12月に配信予定。

―――――――

【解説者PROFILE】
北澤豪/元日本代表MF。ヴェルディの黄金時代を支えた一人。日本サッカー協会理事、日本障がい者サッカー連盟会長を務める。 <選手経歴>本田技研→読売クラブ→ヴェルディ川崎→東京ヴェルディ(2002年引退) <日本代表歴>58試合出場3得点


関連記事

SOCCER DIGEST Webの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

スポーツ アクセスランキング

ランキングの続きを見る

スポーツ 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索